筆者の私もそこの生徒なのだが、香港で骨董鑑定クラスを主催する梁さんは現在、時の人である。
郊外にある倉庫ビルの中に、30年間かけて集めた中国の食器を展示する私設の小さなギャラリー、その隣は彼のコレクションの一部を買う事ができるショップになっている。香港で最も読まれているグルメ雑誌に紹介されたその翌日から1日に複数のインタビューを受けるほどの注目度で、静かな趣味のスペースは一転してコレクターや市民に人気のスポットとなっている。
香港人だけでなく、マカオからツアーを組んでわざわざ買い付けにやって来る人もいるというから驚きだ。
もちろん、香港在住者を筆頭に、懐かしい食器に目が無い日本人が訪れるのも時間の問題だろう。
過去の時代に持ち出されて香港にあるものはともかく、現在、1911年以前の骨董・古物は中国大陸からは持ち出せないため、梁さんのショップにずらりと並ぶ食器の数々は宋・元・明代よりもよりも清末~中華民国~その後の輸出用食器あたりに重点がおかれている。民間の窯で作られた実用目的の食器が豊富で、飾るというより実際に使えるものばかりなのが嬉しい。
骨董で有名なハリウッドロードの店では1種類につき数百のお碗が並ぶ事はあり得ないが、ここには気難しい店主も滞った空気も無く、まるでお碗のデパートといった明るい雰囲気だ。
百年近く使われて来て、しかも欠けていない茶碗やお皿の丈夫さに、あらためて驚かされる。
買って使い続けるもよし、飾って鑑賞するのもいいがこの頼もしい丈夫さは、梁さんの選んだ民間の食器の特徴でもある。
text&photographs:Miyuki Kume