女たちが取り仕切る鉱山町に迫る無法者たちの影……息を飲む傑作西部劇ドラマ

◆『ゴッドレス ー神の消えた町ー』(2017年/Netflix)

 西部劇というと一昔前に流行ったジャンルで少々古臭いのでは? なんて感じる人も少なくないかもしれません。実際、西部劇ものは1950年から60年代にかけて一大ブームとなったジャンルです。

 しかし、2000年代以降も作品は作られ続け、最近のリアルな西部観に基づいたハードなアクション描写、そして苛烈で雄大だった当時の空気のなかで様々なドラマを描き出せる舞台装置として、再び注目を集めるようになってきた印象があります。

 長くなりましたが、Netflixで配信中の『ゴッドレス -神の消えた町-』もそんな昨今の西部劇再ブームに位置付けられる作品と言えるでしょう。しかも、近年ではかなり数の減ったドラマ形式を採用した全7話の作品です。

 この作品を生み出したのはスコット・フランクというクリエイター。あまり名前を耳にしたことのない人物だな、と侮るなかれ。彼はあの日本でも大ヒットしたNetflixの傑作リミテッドドラマ『クイーンズ・ギャンビット』の監督と脚本を手がけた人物で、ジョージ・クルーニー主演の1998年の『アウト・オブ・サイト』や、2017年公開のヒュー・ジャックマン主演の哀愁のX-メン映画『LOGAN/ローガン』で、なんと2度もアカデミー脚色賞にノミネートされた凄腕の持ち主なのです。

 本作は、鉱山事故で男がほとんど死んでしまった町であるニューメキシコ州のラ・ベルが舞台。無法者一味から逃げ出した男・ロイ、彼を匿うラ・ベルの未亡人アリス、そして裏切り者のロイを追いかける危険な無法者一味のボス・グリフィンらが入り混じり、雄大な荒野で白熱の群像劇が繰り広げられます。

 西部劇というオールドスクールな題材でありがなら、本作は鉱山事故で男手をほぼ失ったことによる女性たちの苦悩という設定を取り入れ、自然に“女性が立ち上がる物語”としての側面を際立たせているのも特徴です。

 とりわけ、未亡人の牧場主・アリス役を演じるミシェル・ドッカリーと、保安官の兄を持つ前町長の未亡人・メアリーの格好よさにはしびれます。男顔負けのガンさばきとドンと構えた迫力はぜひ実際に観てみてほしいです。惚れますよ……。

 そんな町を襲うことになる老齢の無法者集団のボス・グリフィンを演じるジェフ・ダニエルズの演技もまた壮絶。逆らう者を次々と消し去っていく超怖い男を怪演しており「こんな奴に狙われたら町のみんなはどうなってしまうんだ……」という緊迫感を毎話積み上げてくれます。

 各キャラクターの過去を知った上で、ついに訪れるクライマックスの激闘は、重厚さと西部劇の醍醐味である痛快なアクションが見事に混じり合い、最高の興奮を味わえるはずです。

『ゴッドレス ー神の消えた町ー』

鉱山事故により83人もの男が死に、女たちが取り仕切るようになった鉱山町ラ・ベル。そこにやってきた男ロイは牧場主の未亡人アリスと懇意になってゆく。しかし、ロイには無法者集団から金を奪い、あまつさえそのボス・グリフィンの片腕を奪っていた過去があった。血眼でロイを探すグリフィンの魔の手は、刻一刻とラ・ベルに迫っていた……。

2021.04.28(水)
文=TND幽介(A4studio)