500年の時間を経ても色褪せない作品

アルブレヒト・デューラー『祈る手』(1508年)

 デューラーの魅力のひとつは細密な描写だ。今回出品される『芝草』(1503年)は『野うさぎ』(1502年)と並ぶ水彩画の傑作。細やかな観察眼と卓越したテクニックから生み出される自然描写は見るものを魅了する。ヨーロッパのボタニカルアートの伝統はこの絵から始まったとも言われている。また『祈る手』(1508年)はデューラーが残した素描のなかで最も有名な一枚。この作品は1729年に焼失した『ヘラー祭壇画』のための習作と考えられている。そのほかでは修業時代に描かれた『13歳の自画像』(1484年)が天才の早熟ぶりを示す作品としてよく知られている。

アルブレヒト・デューラー『13歳の自画像』(1484年)

 観察を通じて現実を捉えるという北ヨーロッパの伝統とイタリア・ルネサンスの絵画理論が出会うことで生まれたデューラーの芸術。500年の時間を経ても色褪せない、その精緻で豊かな世界に触れてみたい。

『アルブレヒト・デューラー:アルベルティーナ美術館収蔵の素描、水彩、版画の傑作』
開催場所 ナショナル・ギャラリー(ワシントン)
開催期間 2013年3月24日~6月9日
URL www.nga.gov/home.htm

鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。

Column

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2013.03.27(水)