豊かな自然と温泉。明治時代から多くの文化人や政財界人の保養地として愛されてきた箱根が今、進化を続けている。昔ながらの伝統を誇る老舗温泉旅館に並び、伝統と革新を融合させて新たな箱根を体感させてくれるラグジュアリーなリゾートホテルが次々と誕生しているのだ。

 今年、2020年にオープンした「ホテルインディゴ箱根強羅」もそのひとつ。ワンランク上のステイを叶えてくれるのはもちろん、つかの間の休息に日帰りで訪れるにも最適の一軒だ。


自然と文化にインスパイアされた 遊び心溢れる館内のアートワーク

 2020年1月、箱根強羅の早川沿いに日本初進出となるホテルブランド「ホテルインディゴ」がお目見えした。

 「ホテルインディゴ」はインターナショナルホテルグループの「インターコンチネンタルホテルズグループ」が世界15カ国以上で展開するブランドで、そのホテルがあるロケーションの地域性や文化・歴史をホテルのデザインやサービスのディテールに汲み込んだ、次世代型のライフスタイル・ブティックホテルとして欧米で人気を博している。

 そんな「ホテルインディゴ」が日本初進出の地に選んだのが、箱根強羅。自然豊かな山並みを縫うように、桜の名所として知られる早川が流れる。その早川沿いに立つのが「ホテルインディゴ箱根強羅」だ。

 ウッディで落ち着いた佇まいのホテルに一歩足を踏み入れると、そこには喧騒を離れたひとときを過ごすにふさわしい空間が広がっている。

 箱根伝統の寄木細工や浮世絵などのトラディショナルな文化と、箱根の自然をモチーフにしたコンテンポラリーアートが共存し、箱根強羅の過去と未来をつなぐかのようなアートワークの数々。それらに目を奪われ、すぐさま気持ちは非日常の世界へ。

 館内の随所で見られる「ホテルインディゴ箱根強羅」ならではの意匠は、客室にも投影されている。和の伝統とモダンなエレメントを融合させた客室は、6タイプ全98室。

 客室インテリアの特徴のひとつは、部屋からのビューやテーマに合わせた彩りが添えられていること。ヒルサイドの客室には太陽と大地のパワーを感じさせるオレンジやグリーン、リバーサイドの客室には川の清らかさを感じさせるブルーをアクセントカラーに採用。

 さらに1919年に創業し、4世代にわたり箱根を撮影し続けている老舗写真スタジオ「Studio Café SHIMA」の写真を加工したヘッドボードアートや、レトロな小物などを配するなど、モダンな中に和テイストをさらりとなじませ、居心地のよい空間を創り出している。

 もうひとつ客室で特筆すべきは、全室のお風呂にはミネラル成分たっぷりの箱根の温泉が引かれていることだ。しかも、そのうちの80室には露天風呂が完備されている。

 澄み切った山の空気を感じながら、いつでも好きなときに、滞在中は何度でもプライベート温泉で湯浴みができるのは贅沢そのもの。

取材・文=立花奈緒(ブレーンシップ)
撮影=石川啓次