「チュック・ムン・ナム・モーイ!」

 行き交う人々が溢れんばかりの笑顔で新年の挨拶を交わす。そんな光景がそこかしこで見られるベトナムのお正月テト。新暦ではなく旧暦で祝われ、2013年の元日は新暦の2月10日。クリスマス、新暦正月と、次々とやってくるイベントのトリを飾るテトは、新たな年を家族や親戚一同で祝う、1年を通して最も重要な祝祭日となっています。そこで、国中が祝賀ムードに包まれるこの時期、旅行者でも簡単に迎春の喜びをベトナムの人々と共に体験できる3つの風物詩をご紹介します。

公園で開かれるテト前限定の臨時花市。花を買い求める人々で24時間賑わいを見せる

 ひとつ目は、色鮮やかな街の姿。年末から年始にかけてベトナムの街は美しい花々で彩られます。年の瀬になると市内各所で花市が催され、そこで購入した花々を、自宅やホテル、ショップ、レストランなどに飾るのです。ハノイなどのベトナム北部は桃、ホーチミン市などの南部ではホアマイと呼ばれる黄梅に似た花がテトを象徴する花として人気で、街は桃色や黄色一色に染まります。また、ホーチミン市中心街の目抜き通りであるグエンフエ通りでは毎年、花をあしらった巨大なオブジェや花飾りも登場。歩行者天国となった大通りには、美しいオブジェを見ようと、多くの家族連れや旅行者が訪れます。

グエンフエ通りの花祭り。写真は2010年のもの

 花を愛でたら、次はエンターテインメント。中国文化の影響を色濃く受けるベトナムでは、旧正月に街中をライオンダンスが練り歩きます。さらにホーチミン市西部の5区に広がるアジア屈指の中華街チョロンに点在する中華寺の境内では、舞台を組んだ大規模なライオンダンスを上演。打ち鳴らされる太鼓の音色に合わせて跳ねまわる、迫力満点のダンスを初詣がてらに楽しむというのも、日本ではなかなか味わえない瞬間なのではないでしょうか。

中華街のライオンダンスは、細い足場の上を飛び回る本格派

<次のページ> 忘れてならないのがテト料理

text:Noriaki Sugita