繊細で退廃的な楽園は刹那の享楽を伝える
グラナダの栄光は、13世紀のナスル朝とされる。レコンキスタの攻勢やムスリム同士の抗争により、ナスル朝グラナダ王国が、イベリア半島における最後の牙城と見なされた。ナスル朝はカスティーリャ王の臣下となることで独立を維持し、ある種の平和を勝ち取るが、ムスリムの君主がキリスト教徒の王の臣下とは無念。栄光の時代、すでに凋落の兆しは見え隠れしていたのだ。
そんな王朝で、最後の灯火のように輝いたのが、アルハンブラだった。元は9世紀に築かれた小さな砦だが、14世紀、増築・改修が繰り返され、比類のない傑作となった。
繊細で退廃的な宮殿は、後世に遺すことを考えて造られてはいない。
右:<支えにならないパームツリーな柱>ライオンのパティオを囲む華奢な柱の林は、パームツリーを模しているといわれ、装飾的なもので、建物を支える役をなさない。刹那な建築の由縁だ
ナスル朝のどの王たちも、先代の宮殿を壊し、己の美意識を具現化した。忍び寄る王国の終幕に、刹那の享楽にふける楽園を、この場所に現出させたかったのだろう。
ライオンのパティオでは、狂気に走った王が妃と王子の首を刎ねたとか。妃と恋に落ちた騎士は、一族郎党集められ、36人すべての首が刎ねられた。いまでもその血の跡が、白い大理石に残るとか。
Alhambra (アルハンブラ)
住所 Calle Real de la Alhambra, Granada
電話番号 +34-958-027-971
URL www.alhambra-patronato.es
開館時間 8:30~18:00、20:00~21:30(金・土曜)、3月15日~10月15日は~20:00、22:00~23:30(火~土)
休館日 12月25日、1月1日
拝観料 13ユーロ
※王宮は入場制限を行っているので、チケットの予約をしておくほうが確実。見学当日、チケット売り場にて購入予約したクレジットカードで発券する。
photographs:Yuji Ono
realization & text:Satsuki Ohsawa
coordination:Terumi Moriya