美味探索Part2
取材が難しい名店“カラキョイ・ロカンタス”

ランチもメイハネも優しい母の味の料理が並ぶ

手前はナスのムサカ、左手奥はコーンのケシュケキ、右奥がひよこ豆の煮込みのせピラフ。どれもトルコ家庭料理の王道だが、ケシュケキはトルコ古代からの料理だといわれる

 ランチタイムはトルコ家庭料理がメイン。ナスのムサカやひよこ豆の煮込み、といったトルコ人大好物のラインナップだが、トルコのロカンタにありがちな「ギトギト油」とか「濃すぎる味付け」とは無縁の、優しい母の味がする！ このあっさりしたおいしさ、イスタンブールでは希少価値だ。

 夜はメイハネになり、魚料理がメインの居酒屋さんになる。メゼと呼ばれる前菜系の種類も豊富で、なかにはラク(トルコの焼酎)に合うという羊の脳味噌まである。魚市場に近いこともあり、シーフードはいつも新鮮だ。余計なことはせず素材の味わいを生かし、上質のオリーブオイルだけで仕上げられた大人のおいしさがたまらない。

左：メイハネの時間になると、このようにガラスケースにメゼが並ぶ。どれも新鮮な魚や野菜がメインなので、日本人の口にも合う
右：羊の脳味噌。お酢入りのお湯で10分ほどゆでた脳味噌をオリーブオイルとレモンであえ、野菜と一緒にサラダとしてサーブされる

 店内の壁はセルジュークトルコを思わせるコバルトブルーと濃紺のトルコタイルが一面に貼られており、オスマントルコ帝国時代に建てられたという歴史的建物によく合っている。インテリアばかりにお金をかけて味がついていかない近年のバブリーなトルコレストラン業界のなかで、おしゃれながらも自己主張が過ぎない、その落ち着いた空間が逆に人気を呼んでいるのかもしれない。トルコのメイハネとしては珍しく、夜も大きな音でガンガン音楽がかかることはない。客層は欧米人やトルコ人サラリーマンなど大人がメインとなっていて、しっとり静かな夜が過ごせる。

 ランチもメイハネも、行く前の予約は必須だ。

ランチもメイハネも予約なしには入れない人気ぶり。店内は壁や柱のタイルがとてもキュート

text&photographs:Aki Yasuo