紀元前の火焔型土器と
現代のファッションが競演
天井画が描かれ、豪華なシャンデリアが目を引く1階の小サロンでは、紀元前3000年前後の縄文時代の土器と、現代のアーティストによるテキスタイル彫刻が展示されている。
大胆で圧倒的な存在感を放つ火焔型土器と、ファッションブランド、アンリアレイジの森永邦彦氏と彫刻家の名和晃平氏とのコラボによる彫刻ドレスが同空間に配された。
日本人が狩猟民族だった頃の大胆な造形美と、器としての用の美を併せ持つ縄文土器。そして、デニム生地を重ねてキューブを作り、グラインダーで削り出した彫刻ドレス。
対極的に見える両者だが、火を思わせるような有機的で複雑な造形や、そこから生まれる生命感という共通要素を介して、この空間で融合し、共存している。
縄文土器が並べられたサロンの先には、天井画と巨大なシャンデリアが目を引く豪華な部屋。ここに、突然、荒野のような大地が現れる。
世界的に活躍する現代美術家の李禹煥(リ・ウーファン)氏による作品《Relatum Dwelling (2)》だ。
地球の変動が大地を崩壊させるプレートテクトニクスを思わせるような荒々しい作品≪Relatum Dwelling (2)≫は、石を割り、その破片をもう一度つなぎあわせて、床一面に敷き詰めたもの。
これまでに禅寺の枯山水をイメージさせる作品も発表していた李禹煥氏。当初、長谷川氏は、フランス側の意向に沿って、禅的な世界をここで展開することも考えたという。しかし、結果的には、モノを破壊し、それをつなぎ合わせ再生することで一つの構造物になるという、一連の営みを表現することを決めた。
「禅とは、ただ静かなだけでなく、その中に非常に荒々しい破壊や矛盾を含んでいると思います。そこには絶えず、再生・沈静化へ向かっていく一つの方向があるのではないかと考えています」と長谷川氏。
部屋の中は歩いて回ることもできるので、天井画やシャンデリアを眺めながら、足元に伝わる石の感覚や、石同士が触れると鳴る硬質な音など、視覚、触覚、聴覚で楽しめる展示だ。
文・撮影=景山由美子