一本につながった眉毛に唇の上のうっすらとした黒いひげ、カラフルなメキシコの民族衣装を思わせるドレス……20世紀のメキシコを代表する女性アーティスト、フリーダ・カーロといえば、そんなイメージが最初に浮かんできます。

 不運な病気や事故の後遺症と闘いながらも、芸術や政治、そして愛に、波瀾万丈に生きた彼女のことを、いまも少なからぬ世界の女性アーティストたちがメンターとして崇めています。

 そんなフリーダの身の回り品200点以上を集めたエキシビション「Frida Kahlo: Making Her Self Up」が、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムで開催中です。

 1954年、フリーダがその47年の短い生涯を閉じたとき、夫で画家のディエゴ・リベラは、フリーダの遺志を引き継ぎ、ふたりが暮らした彼女の生家「青の家」の小さなバスルームのドアを、彼の死後15年間は開けてはならない、と言い残します。

 ディエゴはフリーダの死から3年後に他界するのですが、その後、彼が生前から計画していたとおり、青の家はフリーダ・カーロの博物館となります。しかし、そのバスルームは、なぜかおよそ半世紀もの間閉ざされ、そのドアが開かれたのは2004年のこと。

 そこで初めて、バスルームに息を潜めていたフリーダの身の回り品300点以上が日の目を見ることになったのです。これまでメキシコの外に持ち出されたことのない、これらのアイテムの多くも、今回の展示で公開されています。

文=安田和代(KRess Europe)