19世紀の英国における「アーツ&クラフツ」運動を主導したデザイナー、ウィリアム・モリス(1834~1896)。現代の英国でも、また日本でも人気の高いモリスのデザインを堪能できるウィリアム・モリス・ギャラリーが、500万ポンドを費やした1年間の改装工事を経て、8月2日に再オープンしました。

外観とブループラーク

 北ロンドンのウォーサムストウにあるこのギャラリーは、一部のガイドブックには、「モリスの生家」と紹介されていますが、正確には生家はこのすぐ近くの別の場所にあり、こちらの家は、モリスが1848年から1856年までの少年期から青年期をすごした家です。

 今回の改装では、展示室の数を9室から12室に拡大。全体の展示スペースとしては、以前の1.5倍に増えたそう。また、エレベータが設置され、バリアフリー化されたこと、裏手の公園を見渡すガラス張りのカフェが併設されたこと、新しいエデュケーション&リサーチ・センターとライブラリーができたことなど、大きな変化を遂げました。

モリスの若かりしころと、ウォーサムストウにまつわる展示品が飾られる部屋

 館内は、入口側から時系列でモリスの人生と作品を追っていくことができるように、デザインされています。「Meet the Man」と名付けられた最初の展示室には、生まれ育ったウォーサムストウでのモリスの生活がわかる資料や、初期の作品が飾られています。2番目の「Starting Out」は、モリスがアーティストになっていく過程を探る展示室。モリスがオックスフォード大学卒業にあたり、聖職者になる道を断念しアーティストを目指す旨を綴った母親への手紙、自宅にあったピアノ(ボタンを押すと、そのピアノで演奏したモリスのお気に入りだったフォークソングが流れ出す仕掛けあり)や、ガラスケースに入ったモリス初の詩集とその朗読をヘッドフォンで聴ける装置、初めて自分でインテリアを手がけた自身の家レッド・ハウスの詳細など、バラエティに富んだ品物が展示されています。

左:モリスの詩集の朗読が聞けるオーディオ装置
右:モリスの愛用していたピアノ。スイッチを押すと、モリスの好きだったフォークソングの演奏が聞こえてきます

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text&photographs:Kazuyo Yasuda(KRess Europe)