ファッションが
コミュニケーションと自己表現に変わるまで
チャールズ皇太子のフィアンセとして初めて公式行事に参加したときに、ダイアナ元妃が着ていたのは、オフショルダーの黒のドレス。それまでの王室のしきたりでは、黒は喪に服すときだけと決められていた色でした。
右:ジーナ・フラッティーニのデザインによるシルクシフォンのドレス。1990年の公式ポートレート撮影と1991年のリオデジャネイロ公式訪問の際に着用されたもの。このブラジル訪問時に、エイズ患者と手袋をせずに握手をしたことが話題になりました。(C)Historic Royal Palaces, Richard Lea Hair
若き日の元妃こそ、そういったルールを知らないがゆえのチョイスだったのかもしれませんが、その後次第に確信犯的に少しずつ王室のしきたりを変化させていきました。
例えば、握手をするときに、直接手に触れたいから、という理由で手袋をしなかったダイアナ妃。1991年にエイズ患者との握手の際にも手袋をしなかったことも話題になりました。まだまだエイズという病気に対する世間の知識が乏しかった時代のことです。
右:「エルビス・ドレス」と呼ばれているパールがちりばめられたシルクのドレス(1989年)。デザイナーのキャサリン・ウォーカーは、エリザベス1世のネックラインにインスピレーションを得てこの印象的な襟をデザインしたのだとか。(C)V&A
そのほかにも、ロイヤルファミリーの女性として初めてパンツ姿で登場したり、帽子をかぶらなかったりと、ロイヤルファッションに新しい風を吹き込んだのが元妃でした。今回のエキシビションでは、衣装とともにそれを着用している元妃の写真もあわせて展示されており、手袋や帽子を身につけていない元妃の姿をそこに見ることができます。
文・撮影=安田和代(KRess Europe)