“安心”が導く愉しみがある
旅の達人の新常識

 「旅する喜びを伝えること」。これを天職として世界を渡り歩くトラベルジャーナリストの寺田直子さんとビーチライターの古関千恵子さんのお二人に臆することなく出かけられる、その訳を語っていただいた。

トラベルジャーナリストの寺田直子さん(左)とビーチライターの古関千恵子さん(右)。

――最近、お二人はどんな国を訪れていらっしゃいますか?

寺田 仕事柄、トレンドの地に行きます。去年はアメリカとの国交が回復したキューバへ。最近はフランスやスイスも。

古関 私は海外の雑誌で注目されているリゾートには、積極的に出かけていますね。

「たびたびフランスの小さな村を訪れています。写真はサンシルラポピー。行く先によって全然違う美しい顔を見せます」(寺田さん)

――このところ世界では様々なことが起きています。旅先で気をつけていることはありますか?

古関 私は事前に外務省の海外安全ホームページを必ずチェックします。危険情報が出されていて不安だったら、現地の旅行社に確認したり近くに住む知人に尋ねたり。

寺田 もともと危ない場所に率先して行く気は全くないよね? 逆に風評が広がっている国があれば、その誤解を解くこともミッションのひとつだと思っていて。

古関 私もそう。同じ気持ちです。

「リゾート先進国モルディブ。タージ・エキゾティカ リゾート&スパは洋上ガゼボなどロマンティックな雰囲気が素敵」(古関さん)

――そんなお二人がここ数年活用されているのが、外務省の「たびレジ」です。事前登録すれば、旅先の安全情報をメールで受信できるサービスですよね。

寺田 外務省のホームページをチェックしているうちに知って、毎回出発前に必ず登録しています。

古関 私はお守り感覚で使います。以前ね、現地通貨ではなく米ドルで支払いを請求される為替詐欺の注意喚起が「たびレジ」からあって。この街の土産店で起きています、という内容だったの。買い物のときに気をつけなきゃとリマインドできて、役立ちました。

寺田 たとえば何月何日の大イベントのときは気をつけてとか、具体的な情報が得られるんですよ。私は数カ国の情報が届く設定にしていて、旅先の友人に情報を転送したり、ツイッターで拡散したりして情報を共有していますね。

古関 現地の言語じゃ詳細が分からないこともあるけれど「たびレジ」の情報は日本語だから安心ですね。

寺田 気をつけていると、自然と自分自身の行動も変わってきます。

古関 心持ちひとつで、自分の想像力も広がっていくんです。あそこが危険ならここも危ないかな、この通りは避けた方がいいぞ、とか。

寺田 そうね。日本人って相変わらずお金持ちに見られるし、スマートフォンを路上でいじってるだけで危険なときも。私は汚れたエコバッグを愛用しています。それを持ち歩きながら、場所によっては憂鬱そうな顔で歩くの(笑)。

古関 そう、表情も大事!(笑) あとSNSへの投稿目的で無謀な旅をする人もいて、最近はそれが少し不安かな。女性は腕力が弱いから、いっそう注意を払わないと。

寺田 団体ツアー客もガイドがいるからと無防備になって、スリの被害に遭うことも多いみたい。

古関 アクシデント後の気分が落ちる感じといったら、もう(苦笑)。

寺田 こんな話ばかりしてると、旅って怖いと思われるかもしれないけれど、それはまた違うのよ。

古関 そう、旅って絶対に楽しいし、人生には必要なこと!!

寺田 「たびレジ」もパスポートと一緒、と思えばいいんです。

古関 もともと、旅に出るためには必要なものなんだって。

寺田 美味しくないと評判のお店を避けるのと一緒で、「ここへは行かない」という情報を持って出かけるべき。それでこそ賢いトラベラーじゃないですかね?

古関 そう、まさにその通り!

寺田 実際、旅慣れている人の方が「たびレジ」を活用しているし、その都度、海外旅行保険もきちんと入っている。そういう基本ができてこそ、旅の上級者だと思います。

古関 安全と言い切れる旅はひとつもないですから。「たびレジ」で現地情報を得て、素敵な景色や人、文化に触れてほしいですね。

寺田直子さん
トラベルジャーナリスト。80カ国以上もの海外を訪れ、旅の魅力を発信し続ける。新聞や雑誌、WEBで紀行文、旅情報を執筆。著書『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)など多数。

古関千恵子さん
ビーチライター。マリンスポーツ誌の編集者を経て独立。月1~2回、海外を中心にビーチを巡る。リゾートやダイビング、環境について、女性誌やWEBなどに多数、寄稿。

現地情報が分かる
「たびレジ」で賢い旅を

 「たびレジ」とは大使館などから届く現地の災害や事件など最新の安全情報を、日本語で発信する外務省のメール配信サービス。無料で情報が配信されるので旅行者には大きなメリットだ。個人旅行には大変心強い。

 まずホームページにアクセス。旅行者のメールアドレスを入力後、氏名や滞在国などを入力。家族や友人、勤務先などのメールアドレスも最大10件まで登録でき、同じ現地情報が届けられる。「たびレジ」本登録後に手に入る「旅のしおり」は、旅程の管理にも役立つ。

 また旅の予定がなくても、「簡易登録」で気になる国の情報を得ることも。その国の情勢をうかがい知るのに便利だ。

【お問い合わせ先】
外務省領事局政策課

電話番号 03-5501-8000(内線5370)
http://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/

Text=Rie Tanaka
Photo=Asami Enomoto(portrait)、Naoko Terada