読書室や中庭の
レストレーションも素晴らしい

昔ながらの中庭に、透明感のある天井。(C)Tabanlıoğlu / Photo:Emre Dörter

 図書館奥の読書室は、モスク建築によくみられる、小型ドームが連なった天井が美しい。壁や天井の繊細な文様から感じられる歴史の深さと、これとは対照的に現代的なデスクの白は不思議なコンビネーションだ。

 隣設する「手書き作品図書館」の中庭は昔ながらの雰囲気がそのまま残されているが、天井はETFE(フッ素樹脂)で覆われ、イベントなどの開催にも適応できる環境が整えられている。

 今回は見られなかったが、修復作業中に庭の土台下からビザンティン帝国時代から残る教会跡地が発見されたという。床を耐性ガラスにすることでその遺跡が見えるようになっており、様々な帝国が通過していったイスタンブール史の深さが感じられる一角だ。

ビザンティン帝国時代の教会跡。(C)Tabanlıoğlu / Photo:Emre Dörter

 歴史的な部分を細やかに修復しながら、現代的なアイテムも大胆に取り入れていく…… そんなあざやかなコラボレーションが見どころのベヤズット国立図書館の修復で、タバンルオールはベルリンで行われたワールド・アーキテクチャー・フェスティバル2016で「New & Old」賞、アメリカのアーキテクチャー・プライズ2016の「レストレーション&リノベーション」部門でプラチナ賞を受賞した。

 数多くの歴史的建造物を抱えるイスタンブールで、レストレーションは永続的な課題だ。タバンルオールのこうした新旧を意図的に交えた修復の在り方は、今後のレストレーションにも生かされていくかもしれない。

左:モダンな設備が整いながらも、レトロな「作者別カード目録入れ」のキュート感はそのまま。
右:入り口のソファに何気なく置いてあるチェス台。

安尾 亜紀 (やすお あき)
イスタンブール在住。イスタンブール大学大学院女性学研究所卒。女性誌から料理誌、報道関係まで幅広い分野でライター・コーディネーターを担当。トルコの「おいしい・楽しい・新しい」を中心に、さまざまなメディアで情報発信中。

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文・撮影=安尾亜紀