トルコ料理の未来のために
活躍する日本人料理研究家

日本人にも人気のあるトルコ料理。だけどマスターするのはなかなか難しい。

 世界三大料理の一つ、トルコ料理の美味しさはいわずもがなだけど、いざこれを本格的に習うとなると、トルコでもなかなか実現が難しい。トルコ料理は多くの場合、母から娘に伝えられるもので、実際に作りながら経験のなかで覚えていくもの、という意識が強いからだろう。

義母が嫁に作り方を教え、これを子どもが見ながらコツを覚える、というのが伝統スタイル。

 そんななか、イスタンブール在住の日本人の間で絶大な人気を誇る「イスタンブルのキッチン」という料理教室がある。主宰するのは、トルコで料理研究家として活躍するひろみさんこと大濱裕美さん。留学中のイギリスでトルコ人のご主人と知り合って結婚し、トルコ在住歴は21年。そんな彼女の人気料理教室にお邪魔し、トルコ料理やガストロノミー界などについて広くお話を聞いてみた。

イスタンブールにある一戸建ての自宅一部を料理教室に開放しているひろみさん。出張教室もおこなう。

「結婚した当初住んでいたアパートの建物には、親戚一同が住んでいたんです。そこでは嫁たちが毎朝6時ごろから集まって、晩の12時までずーっと料理をし続ける。私なんて末っ子のお嫁さんだから、下働きが多くて大変で(笑)。そんな状態が、およそ13年。ここでかなり鍛えられました」

 とはいえ料理本来の基礎については、自身が卒業したプロのシェフコース「MSA(トルコ最大の料理学校)」で学んだことの方が大きいというひろみさん。というのもトルコ料理はきちんとしたメソッドが残されてこなかったために、各家庭でもこの基本知識が欠けている、と指摘する。

およそ2時間で、6~7品の授業と盛り付けをこなす手際の良さ。経験がものを言う。

「巷に出ているレシピには、かなりいい加減なものが多い。だからそれを正しく伝えたい、と思ったのがトルコで料理研究家になろうと思ったきっかけです。あと、どうしても大量にできてしまう上、仕上がりの見極めが非常に困難。だから私としては、いい加減なトルコのお母さんレシピにプロのコツを加えて、一発で美味しく作れるように伝授したい、そう心がけています」

文・撮影=安尾亜紀