その先の地中海へ! 個性的なエオリアの島々
イタリア最南端に位置するシチリア島は、豊かな自然と美しい海に囲まれ、バカンス先として人気の高い島ですが、そこからさらに足を延ばせば圧倒的な自然美に魂を揺さぶられる魅惑の島々に出合えます。「船が飛んでいるように見える海」で一躍有名になったランペドゥーサ島や、アフリカ大陸が見える極上リゾートのパンテレリア島、伝統マグロ漁で知られるファヴィニャーナ島。そして、世界遺産のエオリア諸島……。
エオリア諸島の語源は、古代ギリシャ神話の海神ポセイドンの子、風の神アイオロス(イタリア語ではエオロ)。地中海に浮かぶこの神々の島群は、今も噴火が続くストロンボリ島、名画「イル・ポスティーノ」の舞台となった素朴なサリーナ島、温泉が湧くヴルカーノ島など、小さいながらもそれぞれに個性的。諸島の中心となるリパリ島は、シチリア北岸のミラッツォ港から最短約1時間と意外にも近く、日帰りも可能です。
右:ファンゴエリアに隣接する海も温泉。海なのに温かい!? 不思議な体験ができる。
そんなエオリア諸島のうちで最もレア度が高いのは、諸島西側に並ぶフィリクーディ島とアリクーディ島。ほかの島々と少々離れているせいもあり、なかなか開発が進まなかったようで、リパリ島などと比べると相当な秘境感が漂っています。アリクーディ島に至っては、車が走れる道路もほとんどなく、移動は徒歩のみ。重い荷物を運ぶのはなんとロバ! という秘境ぶりです。
アリクーディ島と比べれば、一応舗装道路もあり、多少開けた感のあるフィリクーディ島でも、ホテルやレストランは数軒しかなく、旅行情報自体もあまりないので、ふらりと訪れる観光客もほとんどいない……のですが、そこがむしろ魅力でもあったりします。人口はわずかに約200人。文明から隔絶されたような島で、とことん味わうべきは、非日常。6~9月のハイシーズンは、そんなバカンスを愛する常連客で賑わいます。
フィリクーディ島に別荘を所有し、毎夏訪れるローマ人が、高速船の窓から島影を見つけて、こうつぶやきました。「ああ、今年もちゃんとあった」。喧噪のローマで日々仕事に追われていると、「あの夏の日々は、現実のものだったのだろうか……?」と思ってしまうのだそう。夢か現か、幻の楽園フィリクーディ島。はてさて、どんなところなのでしょう?
文・撮影=岩田デノーラ砂和子