知られざるイタリアの本当の魅力
銀色に輝く町、アルジェンタ

 イタリアと言えば、ローマ、ベネチアなどの歴史ある美しい都市、秀でた芸術文化、スポーツ、太陽燦々の安定した気候に、そしておいしい食べ物と、たくさんの魅力に溢れる国。それらきらびやかな話題に隠れて、紹介されることはあまりありませんが、イタリアの本当の良さ、本物の魅力を伝えてくれる町があります。

アルジェンタの湿地帯。

 その町の名は「アルジェンタ」。イタリア語で銀色に輝くという意味の名を持つこの町は、ポー川の作り出す湿地帯にあります。特に有名な歴史的建造物があるわけでもない、普通の市民が暮らす小さな町ですが、ここにはイタリアの本当の良さを知らせてくれます。

 今回は、まだ知られていないイタリアの魅力を伝える町、アルジェンタをご紹介します。

人々を洪水から守る美しい建物

 アルジェンタはエミリア・ロマーニャ州、ポー川の流れる平地にあります。高低差の少ないこの地帯には水が留まりやすく、湿地帯となっています。川は肥沃な土を運び、この土地を豊かにしてくれますが、時として一帯を水浸しにしてしまうこともあり、人々は常に洪水の危険に晒されていました。そんなこの地方では1900年代に入って干拓事業がおこなわれ、洪水を防ぐための調水施設が建設されました。

川の水をひく用水路と洪水調整用のポンプ室。

 こちらが洪水を防ぐため、用水路の水の量を調節するポンプ室。1925年に建てられたアールヌーボー調の美しい建物です。

今も現役で使われているポンプ。熟練工によって丁寧に管理されています。

 ポンプを稼働させるための電力を得る発電所、変電所まで備えた施設からは、この事業が国家をあげた一大プロジェクトであったことが分かります。制御盤など、電気系統はリニューアルされましたが、ポンプは作られた当時のものが今も現役で活躍しています。

貯水池として利用されている湿地帯。

 しかし、この調水施設の素晴らしさは設備だけではありません。くみ上げた水を貯めておく場所として、ダムを作るのではなく、もともとある湿原を貯水池として確保、管理しているところです。一体その何が素晴らしいのでしょうか? それは、ここに住む野生動物たちが教えてくれます。

文・撮影=藤原亮子