悪魔的な辛ウマさ!
幻の珍味ペースト「サルデッラ」

 そんなわけで、貧しいながらも唯一手に入るスパイス唐辛子で、工夫を凝らした食をクリエイトしてきたカラブリア。唐辛子系の伝統保存食は、絶品ンドゥーヤの他にもありました。さすが地中海! 青魚の保存食も美味!

塩漬け発酵したシラスと唐辛子、野生のフェンネルを練った伝統、サルデッラペースト。

 イオニア海を見下ろす小さな町クルーコリは、“サルデッラの町”として知られ、伝統的にサルデッラ作りが行われてきました。

サルデッラの町、クルーコリ旧市街から一望するイオニア海。

 サルデッラは、4センチ以下のシラスを数カ月かけて塩漬け発酵させ、身が砕けたところに大量の唐辛子と野生のフェンネルを加え、練って作るペーストのこと。クルーコリには、サルデッラを使った多様な料理が伝承されています。

各家庭で昔から作られてきたサルデッラ。
サルデッラを塗った生地を丸めてオーブンで焼き上げるパン、ピッタ・コン・サルデッラも郷土料理のひとつ。

 しかしながら、2006年より欧州連合の規制により、11センチ以下のイワシを対象とした商業的な漁が制限されることに。商品として生産しにくくなっているのが現状です。つまり、なかなか世に出回らない幻の食材となっているわけです。

“テルツァルーロ”と呼ばれる伝統のテラコッタ(写真奥)で作るサルデ・ク・プラッキエ。要するにイワシと唐辛子の漬物。ご当地では赤ワインを合わせますが、焼酎も合いそう!?

 食文化の伝統が、地球環境と共に失われつつあるのはとても残念ですが、試験漁として復活する兆しも見えているとのこと。青魚好きで辛いもの好きは、幻のサルデッラを味わいにクルーコリを訪れてみてはいかがでしょう?

 ちなみに、11センチ以上のイワシで作る「サルデ・ク・プラッキエ」もことのほか美味。こちらは、粉末ではなく天日乾燥した唐辛子とイワシをミルフィーユ状に詰めて発酵させたもので、オリーブオイルで唐辛子部分を「洗って」パンに載せていただきます。

【Grazie per la collaborazione/取材協力】
Comune di Crucoli/クルーコリ
Aguriturismo Aurea/アグリツーリズモ・アウレア
Laboratorio Artigianale di salumi Ciccopiedi/サラミ工房チッコピエディ

岩田デノーラ砂和子
2001年よりイタリア在住。約10年間のローマ生活を経て、現在は憧れだったシチリアの州都パレルモ在住。イタリア専門コーディネート・通訳チームBuonprogetto主宰。イタリア関連著書多数。近著『おしゃべりのイタリア語』が絶賛発売中。イケメン犬「ボン先輩」と、やらかし系イタリア人の夫「ピンキー」との日々を綴る人気ブログ:ローマの平日シチリア便りもほぼ毎日更新中。

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文・撮影=岩田デノーラ砂和子