喫茶文化が愛されている台湾では、暮らしのなかに茶藝が息づく。“文人好み”といわれ、風雅とともにある台中の茶世界を訪ねる。

» 第2回 典雅な美術館の茶どころ「秋山堂」
» 第3回 名陶が揃う蔡家のギャラリー「廣達藝苑」

◆ 無為草堂 (ウーウェイツァオタン)

文化の薫り高い茶館は茶菓子や小吃も絶品!

茶室が囲む池には、色とりどりの鯉が群れ泳ぐ。ミシュランのグリーンガイドでも高評価を得て、海外からの客も多い。

 1994年、無為草堂は開かれた。木造の建物は池を囲み、渡り廊下や東屋を設えて、緑を映す。茶室に座れば、音もなく通る風。老子の教え“無為自然”を感じさせるような構えだ。

左:阿里山烏龍茶は湯とのセットで1名220元。茶菓子は左から、胡麻団子80元 台中風の草餅70元 タロイモのケーキ70元など。
右:湯は炭を入れた火鉢にかけて、じんわり温める。
館は2階建て。こちらは1階の茶室。

 茶は台湾の名品を揃える。おすすめは海抜1800メートルの杉林溪で育つ烏龍茶。優雅な香りで黄金に澄み、すっと喉を下って、後口に淡い甘さ。雲霧をまとう阿里山の烏龍茶も逸品。こちらは香り芳醇、甘味を喉元に残す。どちらも高山の精気がみなぎる茶だ。

 茶菓子や小吃も吟味したものを用意。台中名物の草餅や胡麻団子。しっとり弾む黒糖蒸しパン、温かいタロイモのケーキ。それぞれに味わい深く、茶を進ませる。スタッフの気配りもこまやか。“人文茶館”と自称するように、館内には美術・博物館級の書画骨董を飾り、書籍を備え、古典音楽を奏でて、文化の色が濃い。台湾茶館を代表する名店は、心を潤わす茶の奥義を今なお伝えてくれる。

左:父の美学が込められた茶館を守る凃小蝶さん。
右:茶室は座敷、個室など様々なタイプを用意。

文・取材=上保雅美
撮影=小野祐次
コーディネイト=トップタイワン・メディアファクトリー