【カエサルの人生になぞらえ、王を賞賛した壮大な絵画】この館の始まりとなるペインテッド・ホールの天井と壁には、ユリウス・カエサルの人生が描かれている。これはカエサルと同様、軍人でもあったイングランド王ウィリアム3世を称えるために選ばれた題材。絵画が完成した1694年、第4代デヴォンシャー伯爵は王から公爵の爵位を与えられ、初代デヴォンシャー公爵が誕生した。ルイ・ラグエル 1692-1694年制作。 【優雅な晩餐はグランドマスターに囲まれて】第6代デヴォンシャー公爵のもとで建てられたグレート・ダイニング・ルームでの初晩餐会は、1832年のこと。ゲストは、女王即位前のヴィクトリア王女だった。宮廷画家アンソニー・ヴァン・ダイクによる4点の肖像画をはじめ、オランダ出身で同時期に活躍したフランス・ハルスの作品などがこの部屋を今も飾っている。写真上の右側、男性肖像画、アンソニー・ヴァン・ダイク 《アーサー・グッドウィンの肖像》1639年制作。写真上の左側、女性肖像画、アンソニー・ヴァン・ダイク 《ジャンヌ・デ・ブロイの肖像》1634−35年制作。 ドレープの隙間から巨匠ルカ・ジョルダーノの絵が。 【巨匠たちのドローイングと、レンブラントが鎮座】オールドマスター・ドローイングズ・キャビネットと呼ばれる部屋では、この館が擁するラファエロ、ダ・ヴィンチ、ルーベンスといった巨匠による約3,000枚のドローイングを入れ替えながら展示。所蔵する2枚のレンブラント作品から、常時1点がこの部屋の壁を飾る。写真の作品は、実験的に描かれたテストピースと考えられている。レンブラント・ファン・レイン《年老いた男の肖像画》1651年制作。 【弾けそうで弾けない!? だまし絵のバイオリン】国王が訪れた際に滞在するステート・アパートメントには、ステート・ミュージック・ルームと名づけられた部屋があり、奥にバイオリンが掛けられたドアが見える。ドアの木目から楽器の落とす影まで、本物そのものだが、実はトロンプ・ルイユ(だまし絵)。ドアの下半分は本物のドアだが、上半分はドアも含め、画家の手で描かれたものだ。ヤン・ファン・デル・ファールト 《ドアに掛けられたバイオリンと弓のトロンプ・ルイユ》1723年制作。 【旧約聖書のストーリーを、16世紀風に再現】チャペル脇の通路、チャペル・コリドーには古代エジプトのセクメト像から、現代アーティストの陶芸まで、年代を超えて多くの美術品が並んでいる。なかには16世紀のイタリア人画家ティントレットの迫力ある作品も。旧約聖書のストーリーを題材として取り上げながらも、絵の中の兵士の軍服は16世紀イタリアのものと思われる。ティントレット《サムソンとデリラ》1600年代初頭制作。 【ラファエロの下絵をもとに、織り上げたタペストリー】王族がくつろぐための部屋、ステート・ドローイング・ルームの壁を飾る巨大な4枚のタペストリー。システィーナ礼拝堂のタペストリーのためにラファエロが描いた《ラファエロのカルトン》をもとに、ロンドンの名工房モートレイクが手がけた。200年近い年月を経ても、進行中のメンテナンスにより往年のエレガントな姿を保っている。モートレイク工房によるタペストリー 1630年代半ば制作。 庭園には複雑で美しい迷路が。週末は家族連れで賑わう。 記事を読む