トルコといえば、この香り!

トルコ独特の文化、コロンヤ。パシャパシャとかけられたら、こうして両手で受け止める。

 トルコには不思議な習慣がある。

 レストランで食事を終えた後、ウェイターが小瓶に入った液体を客の手のひらにパシャパシャとかけてくれる。たいていレモンの香りで、アルコール度数が高いためスッとしていてかなりの清涼感。これを手にもみこんだり、頬や首筋につけてその香りや爽快感を楽しんだりするのが習わしだ。レストランのみならず、長距離バスに乗った時や、祝日に親戚のお宅を訪問した時などにもサービスされる。

親戚の家などにお邪魔すると、たいていはその家の小さな子どもがチョコレートとコロンヤをもって訪問客一人一人にサービスしてくれる。
クラシックシリーズは、多くのトルコ人にとって、子どもの頃の記憶に一番残っているコロンヤ。

 おもてなしの一環としてトルコ社会に深く根付いたこの液体の正体は「コロンヤ」。エチルアルコールに香料が入ったもので、いわゆる「オーデコロン」のことだが、その使い道はトルコ独特だ。大切なお客様に飲み物やお菓子を出すのと同じ感覚で、コロンヤが手に振りかけられる。このほか蚊に刺された時や貧血で倒れた人への気付け効果にも大活躍のコロンヤは、はるかオスマントルコ帝国時代からトルコ人の生活の中で親しまれてきた。

 そんなコロンヤの代表的メーカーといえば、なんといってもエユップ・サブリ・トゥンジェル(Eyüp Sabri Tuncer)。1923年、トルコ共和国創建の年から続く老舗のブランドで、多くのトルコ人がコロンヤと言えばエユップ・サブリの筒形の黄色いコロンヤをイメージするものだ。

 そんな老舗のコロンヤブランドが、新たな経営戦略と新製品のラインナップでイメージを一新している。スーパーなどでの大量販売を抑え、独自ショップでの小売展開でブランド化を図っており、その第1号店をイスタンブールのカラキョイにオープン。コロンヤの種類もかなり充実させ、このほかオードトワレ、ボディケア関連などおよそ100を超える商品がこのショップに並ぶ。

イスタンブールの古い町並みを残しながらも開発が急速に進むカラキョイにオープンした、エユップ・サブリ1号店。

文・撮影=安尾亜紀