高額オペラに行きづらい今の世に生まれた画期的なオペラ鑑賞法
文化芸術への補助金が削減されている昨今のイタリア。以前は、ごく一般のファンでも手の届く値段で鑑賞できたオペラが、今は好きな演目でもなかなかチケットに手が出せないらしい。その結果、増えつつあるオペラ難民……。
「高くてオペラを観に行けない!」と嘆く私の友人もそのひとりだ。彼女は学生時代から大のオペラファン。ローマオペラ座の年間定期シートを契約していた母親の恩恵で若いころは観劇に明け暮れていたが、母上なき今、それを払い続けるのが大変だからと、ずい分前に年間定期シートの権利を手放した。
演目や出演者にもよるが、安くても100ユーロ(約13,000円)は下らないオペラのチケット。ごくたまに安いチケットが出ても座席はよくないし、すぐに完売してしまう(イタリアでは安い席から売れていくのが一般的)。日本に比べればオペラのチケットは圧倒的に安価だが、それでも一般家庭にとって厳しい出費であることに変わりはない。
さて、先日、その友人からイギリスのロイヤル・オペラを映画館で、しかもライブ中継で観られるから一緒に行かないか、との誘いを受けた。演目は「フィガロの結婚」。どちらかと言えば私はイタリアオペラの方が好きなのだが、ライブという言葉に興味をそそられ、オペラ難民たちと合流することにした。
文・撮影=村本幸枝(アッティコ)