フィリップ・スタルクのインテリアにも注目
ラネールは2つの店を行ったり来たりして、客室の責任者を務めます。料理は1件目のエスプリと同じ、素材にこだわり、その味わいを最大限に引き出すシンプルな加熱調理で、質のよい料理を提供してくれます。言い忘れたのですが、このゴドゥインも3ツ星シェフ、アラン・パッサールの弟子でした。ですから、肉の焼き方、野菜の火の通し方などは、一流の腕前。美味しくないわけがありません。そして、なんといってもインテリアはフィリップ・スタルクによるものという点が目玉です。
実は、私はあまりスタルクが手がけるレストランは好きではなかったのですが、この店はとてもいい。入って左側はオープンキッチンになっていて、普通に見えるビストロ風のテーブルと椅子がおいてあり、そして右側は、大きな長いターブルドートのスペースに。
これはスタルクらしいライト、つまりシャンデリアやちょっと変わったランプシェードが下げられていて、ターブルドートも光る仕掛けのついたものですが、ナチュラルな木のフローリングや石造りの壁など、ビストロの気取らないスペースをベースにしているので、アヴァンギャルドなアイディアもしっくりと落ち着いた様相になっています。
夜はオープンキッチンの灯りと、ターブルドートの灯りがぼんやりと浮き上がって、パリジャンはその灯りの周りに集う。シックな装いで足を運びたい店です。
Racines2(ラシーヌ2)
39 rue de l’Arbre Sec 75001 Paris
電話番号 01.42.60.77.34
営業時間 12:00~14:30、19:30~22:30
定休日 土・日
伊藤文(いとうあや)
パリ在住食ジャーナリスト・翻訳家。立教大学卒業。コルドンブルー・パリ校で製菓を学んだ後、フランスにて食文化を中心に据えた取材を重ねる。訳書に『ロブション自伝』『招客必携』(いずれも中央公論新社)、著書に『パリを自転車で走ろう』(グラフィック社)など多数。日本復興支援協会GANBALO代表。
Text:Aya Ito