チェコの名門時計メーカー、“プリム”を訪ねてみる
チェコ共和国の首都プラハの旧市街広場には、チェコ人が誇りに思う天文時計があります。この時計はチェコ語で「orloj(オルロイ)」と呼ばれ、1410年にカダンのミクラーシュという時計技師によって作られたといわれます。構造は機械式で、長い歴史のなかで何度も戦争の被害を受け、その度に修復され現在まで守られている大切な文化遺産。1490年にはカレンダリウムと呼ばれる暦が追加され、一年の季節行事を描いた美しい装飾が施されています。
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この天文時計は、現在の時刻だけでなく、15世紀の地動説に基づく、地球を中心にした太陽と月の動き、太陽の高度、月の満ち欠け、星座の位置、恒星時などの天文学的情報を読み取ることができ、たいへん優れた時計としてたちまち中央ヨーロッパの注目の的となりました。毎正時になるとからくりが見られることでも知られており、時計の周りをたくさんの観光客が取り囲みます。12使徒が小窓から次々に現れる姿は、中世に作られたとは信じられないほどの精密な動きで、見る人々を驚かせ、感動させます。
そんな時計の歴史の深いチェコには、1949年創業の国内唯一の時計メーカーが存在します。現在の社名はエルトン・ホディナージュスカー。「PRIM(プリム)」の名で知られるブランドは1989年まで続いた社会主義時代に大量生産され、国民的時計として広く知られていました。
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工場があるのはチェコとポーランドの国境近く、オルリツケー山脈に囲まれた、ノヴェー・メェスト・ナド・メトゥイーという歴史的な町。16世紀にルネサンス様式の要塞都市として建設され、以来数々の貴族に支配されて現在に至る町です。町の中心部には城が鎮座し、現在でもバルトニュ・ドベニーン家が所有しています。
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かつての要塞都市としての証は現在も残っており、砂岩の岩山の上に建設された町はしっかりとした壁で囲まれ、遠くから見ると風格があります。こぢんまりとした町の中心部には住民が集まる広場があり、現在でもルネサンス様式のかわいらしい家々が立ち並びます。
現在残っている町の景観は、1900年代に改修されたもの。度重なる戦争や火事の影響で1900年代の初頭には、ルネサンス時代の要素は、あまり残っていなかったといわれます。
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文・撮影=クレメントゆみ子