“プラハのエッフェル塔”が立つペトシーンの丘

 チェコ共和国の首都プラハは、地形的には盆地。中心を南北にヴルタヴァ川が流れ、それに沿って築かれた街の周囲にはいくつもの小高い丘があり、まさに中世の典型的な要塞都市です。世界遺産に登録された古都として現在もあり続けているのは、外敵から街を防御してくれた、これらの丘のお蔭だったのです。

 そうした丘のなかでも特に存在感があるのが、ペトシーンの丘。かつてボヘミア王国の王宮として栄えたプラハ城の南西にどっしりと構え、城の防御壁として最も重要な役割を果たしていたのです。

プラハ城の南西にどっしり構えた、ペトシーンの丘。

 中世14世紀の王カレル4世はこの丘に立派な壁を造らせ、さらに街への外敵の侵入を防ぎました。伝説によると当時、働く場所がなく飢えていた人々にこの建設の仕事を与え、壁を完成させたということで、現在でも「The Hunger Wall(飢えの壁)」と呼ばれています。カレル4世自身も自ら壁の建設に携わったという逸話も残っています。

ペトシーンの丘に現在もしっかりと残されている、飢えの壁。

 この丘へは徒歩でも登れますが、登山電車がたいへん便利です。トラム12、20、22番などの「ウーイェズト(Újezd)」停留所から登山電車の乗り場へアクセスできます。車両はガラス張りのため、美しいプラハの景色を見ながら、頂上までわずか2駅で登ることができます。

登山電車は、景色を眺めるのにも最高。
ペトシーン塔は、パリのエッフェル塔と瓜二つ!

 丘の頂上には街のシンボルでもある“プラハのエッフェル塔”こと、ペトシーン塔が建てられています。1891年に建造された高さ60メートルの塔の天辺へは、299段の階段で登れます。そこからの展望は息を飲む美しさ。快晴の日には、チェコ国内で一番高いシュネスカ山まで望めるほどです。

 帰りはぜひ、頂上から降りていく蛇行した歩道をのんびり歩いて行きましょう。春には、丘一面に咲き乱れる桜や梨の美しい花を見ながら、中世古都プラハ全体を望むことができる絶景ポイントです。

ペトシーンの丘から望むプラハの景色。
世界遺産となっている市街の家々が見渡せます。
春には色とりどりの花で、さらに美しくなります。

文・撮影=クレメントゆみ子