シチリアで桜!? いえいえ、アーモンドの花です!
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美しい薄いピンク色の花びら。まるで桜のような花をつけるのは、なんと、アーモンド! イタリアのなかでも温暖な南国シチリアでは、毎年2月ごろから咲き始め、ひと足早く春の訪れを告げてくれます。カリカリ美味しいアーモンドが、こんな花をつけることは意外と知られていませんよね。
シチリアの名産品のひとつでもあるアーモンド。島内のあちこちで栽培・生産されているため、開花時期にはどこでも可憐な花を咲かせる木々を見ることができますが、アーモンドの花と言えばアグリジェントの街。毎年、開花時期に合わせて開催される「アーモンドの花祭り(Sagra del Mandorlo in Fiore)」では、古代遺跡のなかで花を愛でるダイナミックなお花見が体験できます。
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古代ギリシャ神殿遺跡が立ち並び、世界遺産にもなっている「神殿の谷」は、高台にあるアグリジェントの街から一望にできる考古学エリア。現在も貴重な発掘作業が粛々と続いています。そんな遺跡群の合間を埋めるように、オリーブやピスタチオ、そしてアーモンドが茂り、開花時期になるとほんのり色づき、穏やかな春の絶景を楽しませてくれます。
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近づいて見れば、紀元前5~6世紀頃の古代遺跡が放つ威容と可憐な花の見事なコントラスト。季節ごと、そして時間帯によって異なる表情を魅せる遺跡群ですが、ハラハラと舞い落ちる花びらが演出する、古代ロマンは儚い夢。まさにこの時期だけのものです。
文・撮影=岩田デノーラ砂和子