ウィリアム・モリスのさまざまな活動と影響をたどる

フレデリック・ホリヤーによるウィリアム・モリスの肖像画(1884年)。(C)National Portrait Gallery, London

 一方、ナショナル・ポートレート・ギャラリーでは、ホームズとほぼ同時期に現実の英国で活躍したウィリアム・モリスの、アーティストやクラフトマンとしての活動のほか、社会主義者としての顔と、彼がその後のアーティストたちに与えた影響を探るエキシビションが開催中。ナショナル・ポートレート・ギャラリーとしては、ポートレート、オブジェクトともほぼ同数のそれぞれ約70点をカバーした、ポートレート・ギャラリーとしては異例ともいえるエキシビションです。

ウィリアム・モリスが愛用していた肩掛けバッグ。(C)William Morris Gallery, London Borough of Waltham Forest
左:エドワード・バーン = ジョーンズが「尼寺の長の話(カンタベリー物語)」を描いたワードローブ(1859年)。(C)The Ashmolean Museum, Oxford
右:ロジャー・フライによるエドワード・カーペンターの肖像画(1894年)。モリスと同じく「シンプルな生活」を謳った思想家カーペンターは、同性愛者であることを公言していたことでも知られている。(C)National Portrait Gallery, London
モリスが妻ジェーン・バーデンを描いた「La Belle Iseult」(1858年)。(C)Tate 2014

 展示品には、モリスがデザインしたものももちろん含まれていますが、彼の交友範囲のなかにいた人々の作品が、多く展示されています。例えば、モリスと妻のジェーンが住んだレッドハウスに置かれていた、美しいワードローブ。その扉の絵は、モリスの友人であり同僚でもあった、エドワード・バーン = ジョーンズが描いたもの。また、モリスが愛用していた肩掛けバッグ、愛読していたマルクスの『資本論』、彼が所属していた社会主義者ソサエティのアイテムや彼が支持していた女性参政運動のバッジなど、時代を象徴する興味深い展示物がいっぱいです。

 さらに、「人々の生活のためのデザイン」を提唱したモリスが、死後にまで与えた影響として、都市と農村の生活を融合させるという彼のアイデアの流れを汲んだ「田園都市計画」にまつわるオブジェクト、1951年に開催された「フェスティバル・オブ・ブリテン」のポスター、20世紀なかばのテキスタイル、テレンス・コンラン卿デザインの椅子の写真なども。順を追って見ていくと、現代につながる一連の流れがわかるようなつくりになっています。

左:アブラム・ゲームスによる「フェスティバル・オブ・ブリテン」のポスター(1951年)。(C)V & A, London 2014
右:テレンス・コンランと彼がデザインしたコーン・チェア。レイ・ウィリアムズ撮影。(C)Estate of Ray Williams

 ホームズ展もモリス展も、大きな博物館はすでに観てしまったロンドン・リピーターの方に、おすすめのエキシビションです。

『Sherlock Holmes: The Man Who Never Lived and Will Never Die
会場 Museum of London
開催期間 2014年10月17日~2015年4月12日(12月24日~26日休館)
開館時間 10:00~18:00
入場料金 12ポンド

Museum of London
所在地 150 London Wall, London EC2Y 5HN
電話番号 +44-020-7001-9844
URL http://www.museumoflondon.org.uk/

ANARCHY & BEAUTY: WILLIAM MORRIS AND HIS LEGACY, 1860-1960
会場 National Portrait Gallery
開催期間 2014年10月16日~2015年1月11日(12月24日~26日休館)
開館時間 10:00~18:00(木曜・金曜~21:00)
入場料金 14ポンド

National Portrait Gallery
所在地 St Martin’s Place, London, WC2H 0HE
電話番号 +44-020-7306-0055
URL http://www.npg.org.uk/

安田和代(KRess Europe)
ロンドンを拠点とする編集プロダクションKRess Europeの代表。現在、ヨーロッパでの生活をテーマとした初めての電子書籍を刊行すべく、準備中。

 

Column

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文・撮影=安田和代(KRess Europe)