物語の核心である「秘密」

 映画『ファーストライド』は、ハプニング続きのコミカルな珍道中だ。だが後半のある時点で長年の友情に隠されていた、ある“秘密”が明かされる。

「隠れていた事実を、意図的な“どんでん返し”のように表現したくありませんでした。だから、観客の皆さんの中には、予想する方もいるだろうと思っていましたし、それでもいいと思ったのです。観客の皆さんが彼らの初旅行を見守りながら、彼らの物語に少しずつ共感し、最終的にその背景や思いを理解していく過程を描きたかったんです」

 そして、もう一つ意識的に避けたことがあったという。

「だからといって、過度にお涙ちょうだい的な表現にならないようにも演出しました。『ファーストライド』は大切な友人を思い出し、お互いを労わり、癒しあう物語であって、涙を強いる物語ではないと思っていたからです」

そばにいる「大切な人」と「小さな幸せ」を見逃さないで

 前作『ラブリセット』は「記憶喪失」、今作は「叶わなかった約束の実現」。題材は異なるが、どちらも「時間」や「何かを取り戻すこと」を描いているように見える。監督自身の内なるテーマとは何なのだろうか。「私が作品を通して伝えたいテーマはいつも似ている」という言葉に続いたのは……。

「たとえ現実が辛くても、自分のそばにいる大切な人との思い出を忘れないこと。自分のそばにある小さな幸せを見逃さないで、ということです」

 その言葉を聞いて、ふと思い出した顔がいくつかあった。ドラマチックな奇跡ではなく、すぐそばにある大事なものをナム・デジュン監督は撮り続けている。

「日本の皆さんにも、映画『ファーストライド』をご覧いただいて、日々の大変なことから少し離れて、大切な友人や学生時代の思い出を振り返りながら、笑顔になっていただければ嬉しいです」