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デビューからの10年間を振り返って「これに落ちたら辞めよう」

――神尾さんは2025年でデビュー10周年を迎えられます、おめでとうございます! デビュー当時の自分は現在の神尾さんにどう映りますか?

 興味本位で芸能活動を始めたこともあり、当時は本当に何も考えていなかったんです。撮影現場に行っても「ここはどこ? 今は何の時間?」、「あ、山田涼介だ! 間宮祥太朗だ!」みたいな感じで(苦笑)、自分が俳優という実感が全然なかったですね。

――ターニングポイントとなった作品を選ぶなら、どれになりますか?

 ターニングポイントでいうと、ドラマ「恋のツキ」(テレビ東京/2018)と「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系/2019)の2作です。

――ドラマ「恋のツキ」は徳永えりさん演じる平ワコが、恋人(渡辺大知)がいながらもバイト先の高校生・伊古ユメアキに惹かれてしまうというストーリー。神尾さんはユメアキを演じられましたね。

 「恋のツキ」はオーディションで選んでいただきました。当時、「これに落ちたら辞めよう」と思っていたんです。オーディションでもそう言ったくらい意気込みもありましたし、とにかく必死でした。あの頃は、すごい焦りがあったんですよね。それは今回演じた丈流の面接の必死さとちょっとかぶるなと思います。

 結果、選んでいただいて、地上波で初めてメインの役として出させてもらうことになりました。でも気合いが空回りしたのか、上手くやろうとしていた自分がいました。

 監督には見透かされて、ダメ出しをされて。そこで自分は上手くないんだなと、1回自分を見つめることができました。それからは下手くそなりに頑張ろうと思い直せたので、本当に転機になった作品だと思います。

――俳優としての覚悟を改めた作品だと。もう1作の「3A」は菅田将暉さん演じる高校教師が生徒29人を人質にとり、ある生徒の死の真相を明らかにする学園ミステリー。非常に話題になりましたよね。

 はい、そうですよね。同世代にこんなに上手くて、すごい人たちがいっぱいいるんだってまざまざと感じた作品でした。もっとちゃんと仕事と向き合わないといけないなと、そこでも刺激を受けました。

――「3A」は各話ごとにスポットが当たる人物が変わっていくのも特徴で、その分プレッシャーもかかっていたのでは?

 本当にそうでした。当時は今より少し強気だったのもあって「やってやる!」と思っていたんです(笑)。今はそうした競争心みたいなものはあまりないけれど、同世代俳優と一緒にいたので湧いた感情だったかもしれないですね。

――18~19年あたりから出演作品も途切れず、かなり忙しくなっていそうです。

 確かにこのあたりから、何年に何をやっていたかとか……もう全然覚えていないです。作品についてはちゃんと覚えているんですけど、自分は何を考えていたのかな……(笑)。

――プライベートと仕事の割合も大きく変わったんですか?

 変わったと思います。がむしゃらにやらなきゃいけない時期ではありましたけど、プライベートも大事なので、仕事だけにならないようにとはずっと意識していました。

――選ぶのは難しいと思いますが、特にご自身のお気に入り作品は何でしょう?

 「いちばんすきな花」(フジテレビ系/2023)。本当に好きな作品です。

2025.01.29(水)
文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=奥山信次(barrel)
スタイリスト=大内美里