ガウディの遊び心が随所に

ガイド付きツアーがおすすめ。

 さて、いよいよ建物の中に入ってみよう。城をイメージしただけあって重厚な、どちらかというと暗い雰囲気の外観とはうってかわって、一歩中に入ると、そこは白壁を基調とした明るく快適な空間。建物の隅々まで自然光を採り入れることに長けていたガウディらしく、階段の吹き抜けには大小の窓を配置し、また柱の幅広の部分は丸くくりぬいて光が通りやすくしたり、と数々の工夫が見られる。踊り場に設けられた西向きの大窓は八角星をモチーフとしたステンドグラスとなっており、日が傾いてくるにつれて、窓から差し込む陽光が白壁に色とりどりの影を映し出す。上階のサロンスペースの窓にも色ガラスが使われ、同様の効果が見られるそうだ。

左:白壁にタイルをあしらった、明るい玄関ホール。
右:自然光が降り注ぐ階段の吹き抜けスペース。柱上部の穴は、デザインのためだけでなく、光を通すための工夫のひとつ。

 階段の最上部には、吹き抜けに突き出す形で小さなバルコニーが設置されているが、これは下階とのコミュニケーションのためのもの。たしかに、バルコニーからは、いちばん下の玄関スペースまでをすんなりと見わたすことができ、これなら声も楽々届きそうだ。こういった実用性に裏打ちされた遊び心は、さすがガウディといったところだろう。

左:踊り場の大窓を飾る八角星のステンドグラス。
右:未完成のまま残された最上階。サグラダ・ファミリアにも用いられた革新的な建築技法が使われていることがわかる。

 ここから先は、また別の狭い階段でさらに上へ。屋根裏にあたる最上階まで登ると、そこは他のフロアとはまったく趣が異なり、レンガ壁や柱がむき出しのままになっている。聞けば、長引く工期と膨れ上がる経費に音を上げた依頼主が、この時点で工事を打ち切ったのだとか。つまりこの夢の邸宅は工事途中のまま未完成となってしまったのだが、今となってみれば、そのおかげで建物の構造を知ることができる貴重な空間となっている。

ガウディ独特の十字架の塔は、ベリャスグァルド邸のシンボル的な存在。背後の山上にはコルセロラ電波塔が。

 さて、残すは屋上のテラススペースだ。もともとの立地がバルセロナの高台にある上、テラスはかなりの高さにあり、背後の山並みから地中海までバルセロナを一望する素晴らしい眺めが堪能できる。カタルーニャ最後の王となったマルティI世も、その居城から当時のバルセロナの町を眺めたのだろうか。この地が「Bellesguard(美しい眺め)」と呼ばれてきたことに、誰もが納得するはずである。

屋上テラスからは360度の眺望が楽しめる。こちらは南東方面の眺め。右手奥にモンジュイックの丘が見える。

Torre Bellesguard
所在地 C/ Bellesguard, 16-20, 08022 Barcelona
電話番号 +34-93-250-4093

パノラマツアー
開催日 月~土曜日 10:00~15:00(5月~10月は19時まで) 
料金 7ユーロ

フルツアー 
英語ガイド 月~土曜日 11:00~
スペイン語ガイド 月・水・金曜日 12:00~
カタルーニャ語ガイド 火・木・土曜日 12:00~
料金 16ユーロ

市観光局のオンラインショップで、チケットの事前購入も可能
URL http://bcnshop.barcelonaturisme.com/TOURS---VISITS/

坪田みゆき(つぼたみゆき)
バルセロナ在住、コーディネイター。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)イスパニア語学科卒。在東京スペイン政府観光局勤務などを経て、2004年よりバルセロナ在住。バルセロナ、バレアレス諸島(マヨルカ島他)、バスク地方などを中心に、スペイン全土の取材・撮影コーディネイトの他、通訳・翻訳業務も行っている。http://spainbcn.exblog.jp/

 

Column

気になる世界の街角から

世界の12都市から、何が旬で何が起きているかをリポートするこのコーナー。
その街に今すぐ飛んで行きたくなる情報ばかりです!

文=坪田みゆき