ベネチア・カルネバーレと仮面と恋と

 世界三大カーニバルのひとつとされるベネチアのカルネバーレ。もとは、“純粋に恋を楽しむ祭り“ではなく、キリスト教のお祭り「謝肉祭」の風習に由来する、または12世紀にアクイレイアとの戦いにベネチアが勝利したのを祝ってみんなで踊ったのが起源、ともいわれています。

 ベネチアが商業都市として栄華を誇った中世に、カーニバルも盛大になっていきます。芝居や音楽、舞踏会が華やかに催され、人々は着飾って出かけました。

中世の衣装をアレンジし、さまざまに工夫を凝らした仮面装束はベネチアの景色に映えて幻想的な美しさ

 では、ベネチアのカーニバルにつきものの仮面はというと、その当時の社交場であったカジノやカフェで、もっと自由に遊べるようにと、仮面をつけその地位や身分を隠したというのがはじまり。劇場を多く有したベネチアですから、舞台用の仮面を作る技術をもって、美しい仮面が作られるようになりました。

 カーニバルの時にも仮面をつけ、身分、年齢、性別までも越え、貴族も庶民も一緒になってお祭りを楽しんだそうです。

 肩書きやしがらみを捨て、一人の人間として心を自由にする、そんな役割を仮面が担っていたのかもしれません。そして、先のエノテッカのイタリア男たちの話ではないですが、自由になった心はのびのびと純粋に恋を求めたのかもしれませんね。

左:気軽に楽しめるフェイスペインティングでお祭り気分
右:こんなかわいい仮装者もいます

 そんな夢のようなお祭りも、時代が進むにつれ衰退し、一度は途絶えましたが、ベネチアの伝統と文化を復活させようとイタリア政府が1979年にカーニバルを再開しました。そして美しい伝統の祭典は今も私たちを楽しませてくれるのです。

 期間中、さまざまなイベントが催されますが、特にパレードなどがあるわけではなく、思い思いの仮装をした人々が街に集まっているだけ。ということは、仮装をしてそこへ行けば誰でももう参加していることになる、なんとも開けたお祭り。

左:カーニバルの時に食べられるお菓子「フリテッリ」
右:水の都ベネチアの美しい夕暮れ

 仮装は、今ではアニメのキャラクターや、着ぐるみなどさまざまですが、中世の衣装をアレンジした仮面装束は、ベネチアの街並に映えてうっとりするような美しさ。入り組んだ路地から、そんな衣装の人がふと現れようものなら、一瞬自分が中世に舞い戻ったのでは? という目眩のような錯覚と、ときめきを感じずにはいられません。

 ベネチア伝統の美しい仮面を買えるお店もありますので、仮面を付けて参加するのも良し、中世にタイムスリップしたような景色を眺めるも良し、はたまた遠く日本からその情景、その歴史に思いを馳せてみるも良し。カーニバルの楽しみ方はさまざま。

 カーニバルはキリスト教の四旬節の前におこなわれるのが習わしで、今年、2014年は2月22日~3月4日。もうまもなく開催です。

Tragicomica
所在地 San Polo, 2800, Venezia
電話番号  041-5240702
URL http://www.tragicomica.it/
有名歌手からもオーダーが来る、舞台衣装を手がけるお店です。カーニバル用の衣装のレンタルもあります。詳しくはウェブサイトから。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブック www.facebook.com/chococogogo

Column

気になる世界の街角から

世界の12都市から、何が旬で何が起きているかをリポートするこのコーナー。
その街に今すぐ飛んで行きたくなる情報ばかりです!