裏テーマは、いかにかわいらしく見せられるか

 男性同士のラブストーリーを演じるのは、子役から活動をし、多くの役柄を演じてきた萩原さんにとっても初めてのこと。

「平良というキャラクターをしっかり考えた上で『やってみたい』と思えたんです。どういう表現をしてどういう画になるのか、考える時間をたっぷりいただいてから決断するステップを踏めたことは、ありがたかったです」(萩原さん)

 高校での出会いを経て大学4年生になった平良と、芸能事務所に所属し俳優としての道を歩み始めた清居。劇場版では、一軒家で同棲生活を始めたふたりの幸せな日常が描かれていく。と同時に、恋人になったにもかかわらず、清居のグッズをこっそり溜め込んだり、怪しさ満点の変装で出待ちをして、他のファンから“不審くん”というあだ名をつけられるなど、平良の清居への狂信ぶりはドライブ感を増していく。

「平良になるときに意識していた裏テーマは、かわいらしく見せることでした。真面目にやりすぎると“キモい”の域に行ってやばい人だと思われてしまう(笑)。そこを“キモかわいい”にしないと、観ている方に受け入れてもらえないし、ふたりを好きになってもらえないと思ったんです」(萩原さん)

 ただし、その微妙なラインを探るのは至難の業だったよう。

「コミカルな部分を出しつつ、ファンタジーに見えるようにも意識しました。あとは素直なところ。清居に対する平良の想いには下心がないんです。生々しくないよう濁らない素直さを意識しました」(萩原さん)

 この物語の面白さは、平良の一方的な恋心を描くのではなく、清居の視点から見た平良への想いも丁寧に紡がれていくこと。クールで美しく、俺様な態度の清居の内面が、実は乙女のように繊細なことが次々と明かされていく。そして対等な恋人関係を望む清居の願い虚しく、神を崇めるかのように接する平良との関係は、想いが強くなるほどすれ違ってしまう。

「平良に比べたら、清居は人間としてまともだと思うんですけど、実は究極のツンデレだからどっちもどっち。素直になりきれないのが彼のかわいらしさでもあるので、そこは意識して演じました。平良は自分を絶対に曲げることがないので、結局は清居が寄り添う形になります。ヒロインは完全に、僕が演じた清居なんです(笑)」(八木さん)

 お互いを「利久」、「勇征」と呼び合うふたりは2歳違い。萩原さんが「自分が年下だってこと忘れてた。だいぶ失礼だね」と言うと、すかさず「そんなことないよ」と八木さんがフォロー。演じた“ひらきよ”を地で行く仲のよさだ。

「利久に対して『お兄ちゃんでいなきゃ』と思わなかったし、僕が作品の中で清居でいられたのは完全に利久のおかげです。お芝居においては大先輩だし、いつだって引っ張ってくれていました」(八木さん)

 シーズン1が放送されたときには、なんとふたりきりで鑑賞会をしたというエピソードも。

「撮影中から一緒にごはんに行きたいねと話していたので、お酒を飲みながら1話を観たんです。その店はカラオケもできたのですが、利久はスタンドマイクを使って大好きな玉置浩二さんを熱唱したりして(笑)。最高でした!」

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萩原利久(はぎわら・りく)

1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。ドラマ『3年A組-今から皆さんは人質です-』連続テレビ小説『エール』映画『花束みたいな恋をした』などに出演。映画『おとななじみ』が5月12日に公開予定。1st写真集『R』が発売したばかり。

八木勇征(やぎ・ゆうせい)

1997年5月6日生まれ、東京都出身。2017年にFANTASTICSのメンバーにボーカルとして加入。ドラマ『ばかやろうのキス』、『沼る。港区女子高生』、舞台『脳内ポイズンベリー』映画『HiGH&LOW THE WORST X』『イチケイのカラス』に出演。

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映画『劇場版 美しい彼~eternal~』

高校で出会い、すれ違いを経て恋人同士になった平良一成(萩原利久)と清居奏(八木勇征)。新人俳優としてのキャリアに邁進する清居と、写真家になる夢に及び腰の平良は、同棲生活を送りながら新しい一歩を踏み出していく。凪良ゆうのBL小説を酒井麻衣監督が映像化。

4月7日(金)より全国公開
https://culture-pub.jp/utsukushiikare_movie/

2023.03.14(火)
Text=Kozue Matsuyama
Photographs=SAI
Styling=Shinya Tokita〈萩原〉,Shogo Ito(sitor)〈八木〉
Hair & make-up=Yusuke Kasuya(addict_case)〈萩原〉,Kiyomi Onuki(Luana)〈八木〉

CREA 2023年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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