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「梅安と彦さんがLINEしてるぜ」

──初共演とは思えないくらい、息もピッタリでした。プライベートでも交流されているのですか?

 ご時世的にもスケジュール的にもプライベートでお会いすることはなかなか難しいので、撮影所のある京都と東京を往復する新幹線の移動中に愛之助さんにLINEを送ったりして交流を深めていました。自分でもふと「梅安と彦さんがLINEしてるぜ」なんて思うことはありましたけど(笑)。

──梅安と彦次郎のLINEですか……。どんな内容なのか気になります。やはり、役作りやスケジュールのことが多いのですか?

 いや、お酒の話が多かったかな(笑)。新幹線の中でハイボールを頼むと、氷の入ったグラスとおつまみがついてくるんですよ。それを撮影の時に愛之助さんに話したら「豊川さんだから特別扱いなのでは」と言われたので、実物を“証拠撮影”してLINEで送ったら、後日愛之助さんも、「ハイボールを頼んだら、ちゃんと氷とグラスがもらえました」と、LINEで写真を送ってくれました(笑)。

 初共演でこれだけ濃い関係性が構築できたのも、この映画が梅安と彦次郎のバディものだからだと思うんですよね。それがこの映画のいちばんの魅力であり、おもしろいところでもあると思うので、映画を観てくれた人が二人のバディを気に入ってくれたらうれしいなと思います。

──お二人の関係性の濃さは、人間のつながりが濃い時代劇だから生まれたとも考えられますか?

 そうかもしれませんね。映画でもテレビドラマでも舞台でも、時代劇に出てくる人たちって、現代と比べて格段に“近い”距離で暮らしていますよね。日本刀が届く範囲で戦いが行われるから、自分が斬った相手の血や汗が自分にふりかかることもあるし、携帯もメールもない時代なので、大事な話は相手の耳元で話す。そういう圧倒的な距離感の近さを共体験できるのが時代劇の魅力であり、今回の映画のバディ感を強めた可能性は大いにあるのではないかと思います。

2022.12.18(日)
文=相澤洋美
撮影=橋本 篤、山元茂樹