妹の伊藤が若手実力派として周知されつつあった2019年、兄もまた、コンビ結成以来の目標であったM-1グランプリのファイナリストとなり、一躍世間に知られるようになった。身近にいる人間ばかりでなく、その出演作を見る者にも刺激を与え、生きる意欲のようなものを抱かせる存在。そんな俳優に伊藤はなりつつある。

 ここ数年で俳優としての評価も一挙に高まり、映画賞などの受賞もあいついだ。これについて本人は《賞をいただいたり、褒めていただいたりといった、自分にとってプラスになることは、すべてスタートラインだと思っています。なぜかというと、『もっと何か見せてくれるよね?』と期待されていることだと思うので。スタートラインが増えるのは嬉しいです。でも、最近気づいたのは、スタートラインが更新されていくということは、ゴールもなく満足することもなく、一生走り続けていくってことなんですよね》と一昨年のインタビューで語っている(※4)。兄の言ったとおり、それが天職ということなのだろう。

※1 『GALAC』2020年10月号
※2 『ピクトアップ』2005年11月号
※3 伊藤沙莉『【さり】ではなく【さいり】です。』(KADOKAWA、2021年)
※4 『キネマ旬報』2020年11月下旬号

2022.05.17(火)
文=近藤正高