宿主がもつ美意識に触れ、町の歴史を知る
◆MARUYO HOTEL(まるよほてる)
東海道五十三次の42番目の宿場である桑名は、東海道唯一の海路である「七里の渡し」で、宮宿(現在の愛知県名古屋市の熱田区)と結ばれていた町。お伊勢参りの玄関口でもあったため、流通および経済の拠点として発展してきた歴史をもつ。
そんな伝統のある町、桑名に生まれたのは、一棟貸しの宿「マルヨ ホテル」。
元は材木商を営んでいた「丸与木材」の会社兼邸宅だった建物を、創業者の玄孫である佐藤武司さんとその妻であるギャラリストの正木なおさんがリノベートして生まれ変わらせた。
ホテルに着き、丸与木材の屋号があしらわれたのれんをくぐったら、まずは中を一周してほしい。
モダンなラウンジ、ジョサイア・コンドルがデザインした六華苑をオマージュした洋室、雪見障子越しに見える苔庭……、オーナー夫妻の徹底した美意識に驚くはず。
元の建物の良さを引き出すため、あえて西洋風の格子を用いたり、現代アートの作品と江戸時代の蔵戸を並列に飾ったり。
和の美をまとった空間に、国や年代もバラバラな調度品やアートを置くことで、西洋の文化が流入してきた桑名の町の歴史を形にしたかのような空間を作り上げているのだ。
華美でも単調でもない絶妙なバランスで調度品とアートが配されているので、非日常の空間ながら優美な時間が過せるのだろう。
宿主の美意識に浸る経験は、またとない贅沢なものになるはずだ。
MARUYO HOTEL(まるよほてる)
所在地 三重県桑名市船馬町23
電話番号 090-2773-0004
客室数 1棟
料金(1名) 36,000円~(1棟4名利用、2食付き)
https://www.maruyohotel.com/
文=CREA編集部
写真=平松市聖、佐藤 亘