コレクションしているアイテムはすべて日常的に使用する

 ミッキーマウスの時計は1933年に製造されたもので、10年ほど前に原宿のワンミニッツギャラリーで購入しました。箱付きはなかなか出てこないレアものです。今見てもデザインが新鮮で、メンテナンスをしながら現役で使っています。時計に限らず、自分がコレクションをしている実用的なものは、すべて日常的に使っているものばかりです。

ピカソの作品から学ぶ、究極にシンプルな服のあり方

 ピカソのリトグラフは、出張でロンドンを訪れた際に、テートモダンの近くにある「Marcus Campbell Art Books」で手に入れました。ピカソって生涯でおよそ15万点の作品を残しているんですが、彼の内面や環境の変化によって、いろいろな時期があって、その都度作風が変わっているんです。

 生き様が最後まで挑戦的なんですよ。少年時代の油絵を見ると、素人の私でもその頃からものすごい技術を持っていることがわかるぐらいなのに、晩年の作品があのキュビズムなんです。キュビズムの作品は見る人が見れば線がすごいらしいのですが、それは服も同じ。パターンの構築線ってシンプルにするほうが難しいんです。

 だからいつもこの絵を見ながら、究極のシンプルで素敵な服ってこういうことなんだろうなとじわじわ考えています。

リブランディングに影響を与えた、およそ50年前の名著

 ピカソやディズニーももちろんそうですが、古き佳きものから変わらぬ本質を探るということは常に心掛けていることです。

 ナノ・ユニバースのリブランディングの方向性を決める際にヒントを得たのが『ホール・アース・カタログ』でした。政治家が歴史から学ぶのと同じように、自分もサステナブルなことを考える時に、1968年に発行されたこの本から叡智を得ようと意図したんです。

 もともとはどこかの図書館に寄贈されていたもので、図書カードのデザインも素敵です。リブランディングしたナノ・ユニバースでは洋服をLB.01からLB.06までの番号ごとにレーベル分けしていますが、この番号にライブラリーを略したLBという名前をつけたのは、この図書カードの影響です。日本で1975年に発行された「メイドインUSAカタログ」も、1976年の「ポパイ」の創刊号も、ホール・アース・カタログの影響を受けていたことが芋づる式にわかってきます。

栗野宏文さんの大ファン

 ユナイテッドアローズの栗野宏文さんの大ファンで尊敬しています。2020年に書籍『モード後の世界』を出された時は、栗野さんご本人からサインもいただきました。

 昨年はアパレルの相談駆け込み寺のような会社「ユマノス」を、同じく尊敬する元ユナイテッドアローズの中尾浩規さんとふたりで設立されて、ナノ・ユニバースでもセットアップのスーツをつくってもらうなどお世話になっています。先輩たちが会社の垣根を超えて動き出している姿勢は、我々も見習っていきたいですね。

2022.04.09(土)
文=石川博也
撮影=杉山秀樹