全客室に源泉かけ流しの露天風呂が完備

 山形座 瀧波の客室は、移築した蔵をリノベーションした「KURA」、春になると桜がきれいに見える「SAKURA」、山形の家具や作家の工芸品を配した「YAMAGATA」の3タイプあり、それぞれ居心地のよい滞在ができる。

 極上の滞在を望むならば、「KURA01」が最も広く、大正時代の迎賓館を移築した特別な空間となっている。

 3間続く客室は畳ではなくブラックウォルナットの無垢材の床。違い棚や天袋、細工の美しい欄間など、和の空間なのに不思議とハンス・J・ウェグナーなどの北欧家具とマッチする。

 なお、リニューアル前に大浴場だった場所と客室棟は、2023年春以降に1日2組限定の高級オーベルジュとしてオープン予定。プライベートな空間で極上の料理を体験できる贅沢なホテルの誕生とあって、期待が高まる。

 19ある客室は全て源泉かけ流しの露天風呂が付いている。この日泊まった「KURA02」には蔵王石をくり抜いた露天風呂があり、庭の樹木にはこんもりと雪が降り積もっていた。

 さっきまでかじかんでいた手も足も、ひとたび湯船に入れば一気にポカポカに。硫黄の香りがふんわりと香るほぼ無色透明の温泉は、体の芯から温めてくれる至福の湯。

 この温泉は「生まれたての十割源泉」であり、つまり、何も加えていない、鮮度の高いかけ流しの源泉ということ。空気に触れないように湯を注入しているから、酸化していないフレッシュな温泉に浸かれるというわけだ。

そば打ちのパフォーマンスと日本酒の試飲サービス

 夕方4時30分からはダイニング「1/365」で、料理の前座として行われるそば打ちのパフォーマンスが楽しめる。先ほどの露天風呂も十割だったが、こちらで使用されているのもそば粉100%の十割そば。

「本日のそば粉は、甘皮ごと挽いた最上早生(もがみわせ)の挽きぐるみと、出羽かおり(でわかおり)の石臼挽き。黒い点々が見えるのは甘皮で、味も香りもワイルドです」

 オーナーの南浩史社長が軽妙なトークとともに、そば打ちを進める。その姿を見学しながら、山形を中心とした東北の地酒4種を、無料(1種のみ有料)で試飲できる太っ腹なサービスもある。

 「ラッキーそば」と銘打って、太めに切ったそばをこっそり仕込む遊び心も忘れない。最後にそばの香りを嗅がせてもらうと、夕食で食べる予定のそばへの期待が一層高まる。

文・撮影=野添ちかこ