週末に、心が洗われる別世界へ出かけてみるのはいかが。少し車を走らせれば、そこにはおもてなしの心に満ちた極上の宿が待っている。

 旅行作家の野添ちかこさんが、1泊2日の週末ラグジュアリー旅を体験。今回訪れたのは、千葉県・鋸南町に2021年11月12日にオープンしたamane。

 海からはほんの数メートル。館内のテラスからはトンビが宙を舞うのどかな空や夕焼け色に染まる海が望め、高級調理器具を完備したキッチンで料理し「暮らすように泊まる」ことができる、大人のクロスオーバーリゾートだ。


夕日と音楽とお酒と。“ウェルカム前菜”という新しいカタチ

 東京湾に面した保田海岸に佇むamaneは、「お宿 ひるた」「紀伊乃国屋 別亭」などを運営する紀伊乃国屋グループの6番目の宿となるコンドミニアム風レジデンス。

 客室にキッチンはあるけれど、素泊まりではない。別荘のようだけれど、1泊2食のサービス付き。自然と近い“グランピング”の要素を取り入れながらも、テントではないから水回りなどハード面はしっかりしていて、快適な滞在を叶えてくれる。

 「amaneという名前は『海に寝に来る』という意味です。テラスには寝転べる大きなソファが置いてあり、無垢材を使ったベッドフロアは床暖房にしました」と蛭田憲市社長。

 一般的な旅館ならお着きのお菓子が出てくるが、amaneでは「ウェルカム前菜」が用意される。

 チェックインとともにお酒を飲み始めたくなるのは、美しい海景のせいだろうか。好きな音楽とお酒を楽しむ至福の時間。房総にはなかった新リゾートの誕生だ。

 一般的な客室はソファやベッドが中心だが、この宿はキッチンが中心にある。

 天井高は6メートルとかなり高く開放的。床はベッドフロア部分を除いて土足で行き来できるようになっている。

 「食事は95%までつくってあるので、ちょっとだけ焼いたり、切り分けたりすれば大丈夫。包丁やお皿はすべて客室にセットしています」と蛭田社長は言う。

 “日頃、料理をつくることの多い女性は座ってもらって、男性がもてなす”のが宿のコンセプトだという。

 クールなブラックグレーのシステムキッチンに「BALMUDA」のオーブンレンジ、北米ブランド「weber」のバーベキューグリルなど、ツールにこだわる男性が満足する高級調理器具が備え付けられている。

 料理はワゴンで運ばれてくる。調理方法は簡単だ。例えば、地魚のブイヤベースであれば「加熱レベル8で15〜17分」など、説明書きに記された通りにIHクッキングヒーターのボタンを押せばいいだけだ。

 夕食はシーフードのカナッペ、黒あわびの蒸し焼き、黒毛和牛と豚肩ロースのステーキ、地魚のブイヤベース、丸鶏のローストなど、食べきれないほどのボリュームだ。

 さらに、フルーツやアイス、シャーベットといったデザートまで冷蔵庫に用意されている。

 Bluetoothでつないだスピーカーで、お気に入りの音楽を楽しみながらお酒を飲んでいると、いつの間にか夜は更け、目の前には満天の星が。

 姉妹館「ゆうみ」のバーラウンジ(夜11時まで)も利用できるので、足を延ばしてみるのもおすすめ。

文・撮影=野添ちかこ