多分、自分の中でテレビ仕様になりきることに抵抗があったんだと思います。ただキレてる方が、「こいつやべぇ奴だ」って自分の中で楽しめるというか。たくさんテレビに呼ばれるようになりましたけど、あえて誰からも求められてないことをしていたところはありましたね。

 

「自分のことを外道と思っている」

――カウンターカルチャーというか。

永野 かましてやるぜ!って(笑)。自分が高校生だったら、「こいつやべー」って思うようなことをやりたかった。『PON!』で、僕が俳優の松本大志さんにビンタをしたのもそう。予定調和みたいなことが嫌なんですよ。でも、そんなことばかりやっていたら、当然どん詰まりになって、呼ばれなくなる。こんなこと言うと怒られるんですけど、当時はもうそれでもいいやって。僕が影響を受けてきた音楽とか映画が根底にあるから、普通であることを許さないというか。

――反体制というべきか、こじらせというべきか。ウケるウケないの土俵にいないのがすごい……。ちなみに、ロケのときはどんな気持ちなんでしょう? さすがに、好き勝手はできないですよね。

永野 僕は自分のことを本当に外道だと思っているんで、人様と接していることに感謝しかないというか。出会う人全員が、自分より上の存在だと思っているから、そこに演じてるみたいなのはないですね。俺みたいな人間に、気さくに『お~いお茶』とかくれると、こんな無意味な喉にお茶なんてすみません!って思います。

――へりくだりすぎですよ!(笑)

永野 だって、「どうも~! おばちゃん!」みたいに行ける奴って、自分に酔っているだけでしょ!? 「僕が来ましたよ」っていうおごりが、どこかにある。僕が今からあなたの退屈を助けてあげましょう――みたいな魔法使いの気持ちで、あいつらは農家の方と接していますから。俺たちみたいな人間は、“農村に外道が現れた”っていう気持ちで行きますから、ぺこぺこしすぎて自分で反省するくらいです。

2022.02.07(月)
文=我妻 弘崇