不安に執着する時間がなかった

――それまで、ご自身の状況を立ち止まって考えることはなかったですか?

スー 31歳から35歳までメガネ業界で働いていた時は、それまでよりずっと自分の時間があって。そこを辞めて、実家の手伝いをしていた時は逆に暇過ぎたので、週3でボクシングの練習に行ったりしました。そういう時期もあったんですけど、音楽業界にいた頃も忙しかったですし、基本的にはずっと働いてばっかりだったので、立ち止まる時間も(自分自身の生活を)楽しむ時間もなかったですね。

 『ひとまず上出来』のインタビュー取材を受けていると、不安とか恐怖という話がよく出てくるんです。聞かれるごとに、仕事を始めてからの私は、あまりにも加速ぎみにここまで生きてきたんだなと気づくというか。不安がなかったとはいわないですけど、不安に執着する時間がなかったので、この先どうなるんだろうっていうことを考える余裕がなかった。ずっと物理として手を動かしていたので、うわーっと仕事してるうちに10年ずつ終わっていくという感覚に近かったですね、30代と40代は。だからこそ50代をどう生きるか、今考えなきゃと思っています。

ツヤツヤしていた頃に得したことなんて、何もなかった

――人生80年としても、40歳は折り返し地点。人生の長さも感じますが。

スー たしかに人生なげぇな!とは思いますよね。けど、それで終わり。長いことによって何かしらの馬力が減ったりとか、長いことにうんざりして活動が低下したりすることはなさそうですね。

――髪の毛の白い部分が増えてきたり、手がカサカサになったりと、今まで持っていたものが手を離れていくことにも不安はないですか?

スー だって、ツヤツヤしていた頃に得したことなんて、何もなかったもの。おっぱいが垂れてきたなぁとかお尻の位置が下がってきたなぁとか、もちろん思いますよ。けど、そうじゃなかった時にいいことがあった?って聞かれたら、別になかったなぁって思う(笑)。

2022.02.01(火)
文=高本亜紀