トスカーナの町歩き
欲張りな夏休みをアレッツォで

緑の中で静かに過ごす休息のとき

 自然に囲まれてゆっくり過ごしたい、そんな願いを叶えてくれるアグリツーリズモの宿。でも、自然に囲まれたところまで行くためには、公共交通機関も届かない人里離れたところへ奥深く進まなくてはならず、車がない限り、ツーリストにはなかなかハードルが高い。ところが、ここアレッツォに、駅からタクシーに乗って10分弱で行けるアグリツーリズモの宿があるのです。

左：バラに包まれた宿の母屋
右：イタリアらしいセンスの光る部屋はゆったりとくつろげる空間

 先述のように、アレッツォは緑の大地に囲まれた丘の上の町、町を出れば、緑豊かな大地が広がっています。そんな地理的条件がこの宿を町近くの素敵な隠れ家にしてくれています。宿を囲むぶどう畑の向こうには、町にある大聖堂の鐘楼の赤い尖塔が見える、そんな距離。それでも、深い緑に囲まれたここは、穏やかな静けさに包まれています。

 中世、伯爵の屋敷だったものの一部を改造し、客室として利用しています。アンティークでありながら、どこかモダンなインテリアも素敵で、ゆったりとくつろげる空間です。緑溢れる庭に配置されたガーデンチェアたちも、ああ、こんな木陰で日がな一日のんびり本でも読みたいな、と誘うように置かれています。

左：庭のあちこちに設けられたテーブルと椅子は、ふと腰掛けてくつろぎたくなる
右：ここで作られたワイン“La Striscia”と“Occhini”。日本でも販売されている

 そして、ぶどう畑に囲まれたここにはワイナリーもあります。トスカーナ原産種、上品な酸味を特徴とするサンジョベーゼを使ったワイン。ワイナリー見学とワインテイスティング＆昼食のコースもあり、宿泊しなくても、利用価値はさまざま。ほんのひととき、この静かな空気に触れるだけでも、心が休まるような場所です。

左：夏にはプールもオープン。ワイン畑に囲まれたプライベートプール
右：木陰でまどろみたくなる静かな庭

 日本ではもうすぐ夏休みですね。旅に出て、知らない町を歩くもよし、歴史や文化に触れるもよし、おいしいワインや食事を楽しむもよし……。はたまた木陰でのんびり昼寝するもよし、みなさまどうぞ欲張りに、素敵な夏をお過ごしください。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー＆ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブック www.facebook.com/chococogogo