「将来は、のほほんとして、小学生みたいなことでふざけられるおじいさんになりたい(笑)」

 芝居をすることも、文章を書くことも、バラエティに出演することも、あらゆるジャンルのエンタメに関わる動機はたった一つ。“好きだから”―。そう中村さんは断言するが、同時にそこには、「売れたい」とか「目立ちたい」とか、「誰かの役に立ちたい」「誰かの日常を彩りたい」という下心や意図もちゃんとある。

「何かを生み出したり発表したりするときって、自分の中にあるバラバラの感情を、ひとまとめにして突き進まないと、目的地まで辿り着けなかったりする。自分を突き上げる動機の成分みたいなのは毎回違うから、『最終的になんなの?』と聞かれたら、『好きだから』と答えるしかないんです」

 中村倫也という人は、いい意味で掴みどころがない。「ない」ことは断言するが、「ある」ことを一色で表そうとはしない。将来は、「優しくて平和で包容力があってのほほんとして、小学生みたいなことでふざけられるおじいさんになりたい」とかで、現時点でも、欲望は減る一方。自分でも不安になるぐらいだそうだ。

「でもそれが素直な自分だとしたらしょうがない。それもまたオリジナリティなのかな」

 「妖かしあってこその都」をなぞって言うなら、「妖かしあってこその中村倫也」。誰とも似ていない存在感は、この先どう化けていくのか。結局、中村倫也という存在が、ワクワクさせてくれる“娯楽”そのものなのかもしれない。

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中村倫也(なかむら・ともや)

1986年12月24日生まれ。東京都出身。2005年俳優デビュー。2014年、初主演舞台「ヒストリーボーイズ」で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。近年の出演作はドラマ「珈琲いかがでしょう」(’21)、「この恋あたためますか」(’20)、映画『ファーストラヴ』(’21)など。

いのうえ歌舞伎「狐晴明九尾狩」

並外れた陰陽道の才能ゆえに「人間と狐の間に生まれた」と噂され狐晴明と呼ばれる安倍晴明(中村倫也)は、妖狐に肉体を乗っ取られた陰陽師宗家の跡取り賀茂利風(向井 理)と対決することになる……。9月17日~10月17日 TBS 赤坂ACTシアター。大阪公演あり。
www.vi-shinkansen.co.jp/kyubi/

2021.10.16(土)
Text=Yoko Kikuchi
Photographs=Satoru Tada
Styling=Arata Kobayashi
Hair & Make-up=Emily

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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