【佐渡島】天然酵母の風味が魅力
佐渡の自然が力を与えてくれる
食べると元気になる絶品パン屋

　芸術家や文化人など、昔から多くの人が惹きつけられ居を構えた佐渡島。その魅力のひとつが食材の豊かさだ。

　食のクリエイターを刺激する海と山、野の恵みが織り成す佐渡のエナジーに注目。佐渡の食材の魅力を活かした2人をご紹介。

島特有の時間の流れと素材を活かした絶品パン

◆T＆M Bread Delivery(ティー＆エム ブレッド デリバリー)

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　こぼれんばかりの笑顔で迎えてくれる店主の山崎智子さんとマーカス・ソトさん。

　NYで出会い、ハワイやイギリスなど世界を旅するように暮らしてきたが30年以上前、日本へ。住みやすい場所を探して北海道から鹿児島まで巡るなか、佐渡にすとんと腰を下ろす。

 「島特有の時間の流れが良かったのかな。昔ながらの日本が今も残り、どこか異国情緒もある」と智子さん。

　4人の子育て真っ最中はレストランを経営し多忙を極めていたが、パン一本に絞ってリスタート。営業は週に2日だけ、あとは野山に遊び、畑や庭を手入れしたり、いろいろな人に会ったり。より深く島にアクセスしていった。

パンは生きているから気分やエナジーが生地に伝わる

　カンパーニュやライ麦パンなど、天然酵母を起こし、風味よくしっかり焼きこんだハード系のパンがT＆Mの真骨頂。

　かつて島には柔らかなパンしか出回らず、最初は売れなくてもいいからと自分たちが食べたいパンを焼いていた。

　意外なことに年配の人ほど「このかたいパン、美味しいわね」と好評で、すっかり島の日常に欠かせない店に。

　使う材料は野の花や島の地酒の酒粕などから起こした酵母に水、粉、塩とシンプルだが、噛みしめるほどに味わい深く、もうひと口と後を引く。

 「佐渡の自然や私たちが元気だから、酵母にご機嫌なエナジーが伝わっているのかも」と、今日も食べると元気になるパンを焼き続けている。

Text＝Kaori Minetsuki
Photographs＝Jun Hasegawa