むき出しになった巨大な地層の壁や生々しさのある黒い大地……。

 “週末ふらり”が可能なアクセスの良さで圧倒的な別世界に連れていってくれる類を見ない島、伊豆大島。むき出しになった地球のパワーを全身で感じる旅へ。

 島の中でも、港によって町の雰囲気はそれぞれ。新しい息吹も感じられる、3つのエリアへ。今回は新しい住民たちが心地よい“町づくり”にいそしむ、今注目のエリア「波浮」をご紹介。


注目エリアの波浮。懐かしさと熱量を感じて

 島の中で今、注目エリアといえば南部の波浮エリアだ。『伊豆の踊子』の舞台でもある小さな小さな港町は、明治から昭和のはじめに多くの文豪が訪れた当時の面影が色濃く残っている。

 古民家といっていい家屋や商店が通りの両側に軒を連ねる波浮の町並みは、古いモノクロ映画のようだ。

 一見、時代に取り残されたかのように見えるこの街がなぜ注目の的になっているのだろう。実は、空き家が増え、元町などに比べて観光客が減ってしまった波浮。

 そこで、地元住民やUターン、移住してきた若者たちが奮起し、「露伴」のように個性的なゲストハウスを作りはじめた。

 町の酒店「高林商店」も、たい焼きが有名な「島京梵天」も若いオーナーがゲストハウスを営んでいるが、競争するのではなく、コミュニケーションをこまめに重ね、アイディアを共有したり、客層が被らないようにしたりと「また来てほしい」と思える波浮の“町づくり”に積極的だ。

 実際、取材時には「高林商店」のオーナーが10万円(!)で買った空き家を、地元や他島から訪れた友人たちが泊まり込みで改修し、新たなゲストハウスを作っている真最中だった。

 楽しそうに作業しながらも、明日の波浮、伊豆大島を想う情熱に溢れていた。

高林商店&カフェ

所在地 東京都大島町波浮港4
電話番号 04992-4-0075
営業時間 10:00~20:00
定休日 火曜
※カフェ営業は金・土曜。

島京梵天

所在地 東京都大島町波浮港6
電話番号 04992-4-1567
営業時間 11:00~17:00
定休日 月・火曜
https://www.tokyovoneten.com/

Photographs=Sai