次はこんなことに挑戦してほしい! ココイチへのリクエスト

 そんなココイチが今後どのような新しい「スパイスカレー」をリリースしていくのかが楽しみです。個人的にはぜひ「合いがけ」に挑戦してほしい。スパイスカレーの世界では、一皿に複数のカレーや副菜を賑やかに盛り込んだスタイルももはや普通というより主流にすらなっています。

 これもやはりチェーン店的なオペレーション上の制約はありそうですが、ココイチなら2種類のカレーをライスの両側に分けて盛るだけで充分な話題性を獲得できそうな気がします。

 その場合2種類のカレーのうちひとつは「いつものココイチのカレー」で良いのです。そのかわりもう片方のカレーは思い切って「万人受け」の範疇を超えたところまで個性的にチューニングする。それを交互に食べ進めるのはいかにも楽しそうです。

 なおかつスパイスに慣れていない一般層も、これなら安心感を持ってチャレンジしやすいでしょうし、なんなら2種類のカレーをお皿の上で混ぜてしまえば、これまでのココイチ流スパイスカレー同様突出しすぎないバランスの味わいでも楽しめる。更に言えば「いつものココイチカレー」部分がある事で、そこにはカツなどのトッピングもやりやすくなる。

 ……単なる個人的な妄想ではありますが、なんだかいい事ずくめな気もしています。

ロイヤルホストのカレーもスゴい

 ココイチに限らず、チェーン店のカレーは進化し続けています。

 ロイヤルホストといえば昔から正統派で高品質な本格カレーに定評がありますが、そのロイヤルホストが少し前にリリースした「ベジタブルカレー&雑穀ごはん」は、さすがの完成度でした。

 動物性の食材を一切使用しないヴィーガン仕様のカレーというと、インバウンドの欧米人向けの「おさえ」であったり、あくまでヘルシー(なイメージ)を求める層に対してのストイックな商品であったりするイメージも強いものですが、これは全くそういうコンテクストと関係なく、極めて満足感の高い味わい。

 素揚げ野菜が雑穀ごはんの上に乗り、そこにプレーンなカレーソースをかけて食べるというスタイル自体は、かつてカフェを中心に流行り、今となっては少々流行遅れの感もありますが、さすがそこはロイヤルホスト、凡百のそれとはあきらかに違います。

 素揚げだけではなくボイルやマリネなど幅のある調理法の野菜が、スプーンでの食べやすさや混ざり具合も計算されつくしたカットサイズでキャセロールのライスの上に敷き詰められているというスタイルは、今までありそうで無かったものです。

 そこにかけられるカレーソースも、カルダモンの爽やかさを軸にした香りがどこかイマドキ感を感じさせつつ、しっかりとコクと深みのあるロイヤルホストらしい味わい。

 どことなく「枯れた技術の水平思考」みたいな事を思わせる、新しいのに既に定番的なおいしさが楽しめます。機会があればぜひお試しください。

チェーン店は優良コンテンツだらけの「宝の山」

 一般にチェーンの飲食店はどうしても一段低く見られがちな傾向があります。

「チェーン店なんておいしくないんでしょ?」というある種の偏見には昔から根強いものがあるのも確か。しかし個人的には、昔はいざ知らず今のチェーン店はむしろ「宝の山」、すなわち優良コンテンツの宝庫であると考えています。

 その優良さを支えているのが変化の速さ。定番商品の改善や時代を見据えた新メニューの投入など、常に前に進む事を恐れないのもまた多くのチェーン店が持つ特徴でもあるのです。

 カレーに関してもこれは例外ではありません。昨今のカレーブームとは付かず離れずで独自の進化を遂げるチェーン店のカレー、これからもどこが何を仕掛けてくるか興味が尽きません。

2020.11.11(水)
文=稲田 俊輔