自分にとって、この1、2年が勝負

――また、劇中では35歳の中年になった倉持も演じられましたが、演技の変化みたいなものはどのように考えられたのでしょうか?

 最初は「中年になってからは誰が演るんだろう」と思っていたぐらいで、まさか自分が演るとは思ってもいなかったですね。でも、特に何かをしようということでなく、沖田さん的にも僕的にも、いちばん変化があってもいい人物なんじゃないか、と思って演じることにしました。彼の空白の十数年間は描かれていないわけですから。

――『横道世之介』は、池松さんの大学(日本大学藝術学部)卒業直前に公開されるわけですが、本作への出演から得たものはなんでしょうか?

 ここ何年か考えてきたなかで、自分がやりたい場所でやれるようになってきたんじゃないかな、とは思いますね。高校から大学まで、それを見極めることに必死だったんですよ。自分がどうあるべきなのか、スゴい考えてきましたし。それで、改めて(『信さん・炭坑町のセレナーデ』の)平山(秀幸)監督や(『半分の月がのぼる空』の)深川(栄洋)監督が撮るような映画が好きだと思いました。大学卒業後の1、2年に照準を合わせてきたので、これからが勝負ですね。ただ、いくら贅沢だと言われても自分の場合、やりたい場所でやらないと、どうしても心が擦れてしまう。自分が歌いたくない歌を歌っているミュージシャンのようになってしまう気がするんですよ。

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2013.03.07(木)
text:Hibiki Kurei