聖女エウラリアの坂道

聖女エウラリアが樽に入れられて転がされたとされる坂道。聖女を祀った小さな祭壇と伝説が書かれたタイルプレートが掲げられている
詩人ベルダゲールが伝説をうたった詩が書かれている。下方には樽の絵が

 ときは4世紀初頭、敬虔なクリスチャンであった13歳の少女エウラリアは、当時ローマ皇帝より禁止されていたキリスト教に対する締め付けに悩み、バルセロナの総督に直談判に出かけたものの、逆に囚われてしまう。

 歳の数だけ罰を与えよという総督の指示のもと数々の拷問が科せられるが、そのうちのひとつが、ガラス片と刃物でいっぱいの木樽の中に裸で詰め込まれ、転がされるというもの。それが行われたのがこの坂道ということになっており、信仰に守られたエウラリアは樽から出された時も無傷のままであったという。

 最後には十字架に架けられて処刑されてしまうのだが、その際には突然雪が降りだし、見物人の目から彼女の裸体を隠したと言われている。埋葬された遺体は長く行方が分からなくなっていたが、9世紀後半に「発見」された。

 バルセロナのカテドラルを訪れたら、主祭壇の手前にある下り階段に注目してほしい。その奥にある祭壇に安置されているのが、この殉教の聖女、現在はバルセロナの守護聖人であるサンタ・エウラリアの棺なのだ。

<次のページ> 錬金術師の家

text:Miyuki Tsubota