バルセロナの旧市街の中心、ゴシック地区。ここは市でいちばん古い地区だけあって、一見何の変哲もない通りや建物にも、興味深い歴史がいっぱい詰まっている。今回は、そういったスポットやそこにまつわる伝説をご紹介しましょう。

アウグストゥス神殿

Centre Excursionista de Catalunyaの建物入口。15世紀ごろのカタルーニャの典型的な邸宅の造り

 ローマ人によってバルセロナの基礎が造られたのは紀元前1世紀。当時、街の中心にはフォロと呼ばれる広場があり、そこにはアウグストゥス帝に捧げられた神殿が建っていた。そして2000年以上を経た現在も、この神殿の一部がその堂々とした姿を残しているのである。

 カテドラルとサン・ジャウマ広場の間に位置するCentre Excursionista de Catalunyaの建物の、由緒ありげな趣の入り口から奥に進んでみると、あら、びっくり! ごく普通に使われている建物の中庭部分に、高さ9mのアウグストゥス神殿の柱が4本そびえ立っている。21世紀の今、15世紀に建てられた建物の中庭で紀元前1世紀の神殿の一部を見上げる。この街が培ってきた長い歴史を実感する瞬間である。

明かり取りの中庭スペースにそびえ立つ神殿の柱

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text:Miyuki Tsubota