11月には新店舗オープン
そして2012年11月中旬、マドレーヌ広場、フレンチの殿堂“アラン・サンドランス”の斜向いという好立地に、新店舗をオープンしました。これが驚くほどモダンです。インテリアを手がけたのは、AGENCE X-TUという建築会社。竹を斜めに切ったような、さまざまな長さのアルミの筒を天井や壁に配して、平面に曲線を作るという、未来的な空間になっています。それに、チョコレートの彫刻を配しているので、素材の面白さが浮かび上がる。
X-TU代表者の1人、アヌーク・ルジャンドルさんは、このアルミの筒の着想は、ロジェさんのラボを訪れたときに得たと言っています。ロジェさんは、彫刻を作るとき、筒状にしたチョコレートをいくつも合わせて台座として組み、それにチョコレートを上掛けしていくのですが、その筒状のチョコレート群が面白いと。そこで、筒をアルミというメタルの素材で表現し、未来に何かが生まれていくというエスプリを彷佛とさせるコンセプトに構築したのでした。このマドレーヌの店は、もちろんチョコレートも売りますが、彫刻を発表する場にしていくということです。
12月には、フランス国立美術協会の運営するルーブル・ギャラリーの展覧会に参加。チョコレートで作ったキューブ型の象を、さまざまな金属で表現した作品を展示しました。オープニングの日には出版したばかりの『アートと素材』というタイトルの、彫刻の作品群を掲載した本のサイン会も行い、「チョコレートを通して大地のメッセージを伝える」というロジェさん。アートとしてのチョコレートの世界を切り拓いていく新境地に、注目が集まっています。
Patrick Roger (パトリック・ロジェ)
住所 3 place de la Madeleine 75008 Paris
電話番号 01-42-65-24-47
開館時間 10:30~19:30
定休日 月曜
URL www.patrickroger.com
伊藤文(いとうあや)
パリ在住食ジャーナリスト・翻訳家。立教大学卒業。コルドンブルー・パリ校で製菓を学んだ後、フランスにて食文化を中心に据えた取材を重ねる。訳書に『ロブション自伝』『招客必携』(いずれも中央公論新社)、著書に『パリを自転車で走ろう』(グラフィック社)など。日本復興支援協会GANBALO代表。
text:Aya Ito