マスコミとの軋轢、国民からは逆風

 だが人気に陰りも現れた。まずアーチー誕生をマスコミから極力隠したり、英メディアをプライバシー侵害や人種偏見で訴えたことなど、マスコミとの軋轢が生じた。さらにハリーが兄ウィリアムとの不仲をテレビ番組で認め、メーガンもロイヤルライフに苦言を述べるなど王室内のギクシャクが表面化した。

 国民からも「環境保護運動に熱心なハリーとメーガンが私用でプライベートジェット機を多用するのは変だ」と逆風が吹き出した。女王は風向きの変化に動ぜず、曾孫アーチー誕生を控えたハリーとメーガンにロンドン近郊の邸宅を贈ったり、メーガンが王室の空気に馴染むようあれこれと女王なりに試みた。

「女王がもはやこれまでと諦めたのは今回、女王のクリスマスに2人が欠席したことでした。クリスマスは欧州諸国では年に1度、肉親が集い食卓を囲む、宗教的性格の濃い大切な祭日です。それを断って2人はカナダ休暇に出発してしまいました」(前出・英王室記者)

話し合いを求めた女王に
メーガンは先手を打った

 女王の決意は恒例のクリスマスの国民向けテレビ演説で明らかにされた。2018年のクリスマス演説では女王の傍らの机上の記念写真で微笑んでいたハリーとメーガンの姿が、2019年のクリスマス演説では机上の記念写真から消えたのだ。「あなたたちをもはや王室の中心メンバーとみなさない」という無言の女王のメッセージだった。

「実は、すでにカナダ休暇出発前から今回の選択的引退をめぐり非公式なやりとりが始まっていたのです。正月明けに2人がカナダから英国に戻り、王室側に性急な要求リストを突きつけた。これに対し、じっくり非公式な話し合いを求めた女王・皇太子に業を煮やした2人が先手を打ち、女王に無断で電撃発表したのです。メーガンはこの展開を見越してアーチーをカナダに残してきたとも言われています」(前出・英王室記者)

 この通りなら、メーガン妃は相当な戦略家だ。

2020.01.16(木)
文=谷口長世(国際ジャーナリスト)