チロル山岳地方を上るローカル列車
このローカル線の起点メラーノから終着のマッレスまで、列車は山間を縫うようにゆっくりと上って行きます。車窓には、この地方特産のりんご畑と、鮮やかに紅葉した深い森、その遥か上には雪を抱くアルプスの山々。それは青空をキャンバスに、ため息のでるような美しさで描かれた光景でした。
左：「Kastelbell」駅で途中下車。きれいなお城という名前のとおり、小さなお城もある町右：小さな町「Rabland」での景色。雪深いチロル地方ならではのとんがり屋根の時計塔
あまりにもきれいなので、車窓からだけではなく、実際に降りて見てみたいと、途中下車。とってもお得な1日券を使えばこんな気ままな旅も楽しめます。次の列車が来るまでの間、ちょっと散策。川のせせらぎ、ひんやりとした山の空気。車窓からでは感じられない旅の風情にしばし浸ります。
ローカル線の終着駅「Malles」
約1時間半で終着のマッレスへ。もう随分上ってきました。メラーノではあんなに上に見えていた山がもうそこに見えます。
チロルの美しい山々を臨むマッレスの村
マッレスはチロルの山々に囲まれたかわいらしい村。子どものころテレビで見た「アルプスの少女ハイジ」を思い起こすような、美しい牧草地、輝く山々、限りなく透明で澄んだ景色。忙しない町の喧噪とは別世界、静かで、穏やかで、山の懐にしっかりと抱かれて、ほっと肩の力が抜ける心地でした。
また、ここからはバスに乗り換えて、さらに山を上り、スイス国境付近まで行くことができます。そしてその先にはこんな絶景も。
深い森の中のレジア湖。湖の中にぽつりと立つ鐘楼は幻想的な風景
車窓の景色を楽しむローカル列車の旅。窓の外をサラサラと流れ移りゆく景色は、見る者を深い旅情に浸してくれます。みなさんも車窓を眺めることはありますか？ お正月休みにでもほんのすこし時間があったなら、車窓に目を向けてみませんか。そこにはもしかしたら旅へと心誘う景色が隠れているかもしれません。
慌ただしい年の暮れ、みなさまどうぞお健やかに過ごされますよう、そして、少し早いですが、良いお年を迎えられますように。
メラーノ～マッレスを走るローカル線SAD社を含む、トレンティーノ・アルトアディジェ州の交通機関に関する総合サイト：www.sii.bz.it
路線や、時刻表、また電車だけでなくバスやロープウェイにも乗れるお得な1日券の情報などもこちらから。
藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー＆ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブック www.facebook.com/chococogogo
